3:リアルタイム口座とは?関税・消費税をスムーズに納付する方法
5:リアルタイム口座の申請ステップガイド(法人・個人事業主向け)
貿易や輸入ビジネスに興味があるけれど、最初に何から始めればいいか分からない。そんな方のために、今回は「貿易を始める際に必要な準備」について、わかりやすく解説します。
実際、DIGISHIPにご相談いただく初心者の多くが、関税や輸入消費税の存在を見落として原価計算を行っているケースがあります。また、「通関業者やフォワーダーが、税金を立て替えてくれる」と誤解している方も少なくありません。
しかし、これらの誤解や知識不足は、最終的にコストの膨張や不利益につながります。本記事では、そうしたリスクを避け、自立的かつスマートに輸入貿易を始めるための方法を、経験と実例を交えてお伝えします。
まず最初に、「貿易とは何か」を簡単に整理しましょう。その貿易とは、国をまたいだ商品やサービスのやり取りであり、「輸出」と「輸入」に分かれます。特に、初心者にとって始めやすいのは「輸入ビジネス」です。
輸入の際には、以下のようなコストが発生します:
しかし、多くの方が「関税」と「輸入消費税」を抜いたまま、原価計算をしてしまいます。結果として、想定より利益が出なかったり、赤字になってしまうケースが後を絶ちません。
では、実際にどのような税金が課されるのでしょうか?
まず「関税」とは、輸入商品に対して国が課す税金で、税率は品目ごとに異なります。国際的な「HSコード(関税分類コード)」を基準に、関税率が決まります。
次に「輸入消費税」とは、国内の消費税と同様の扱いで、輸入された商品にも課されるものです。税率は2025年6月現在で10%。
課税対象となる金額は、商品代金+送料+保険料+関税の合計額です。
たとえば:
商品代金:100,000円
国際送料:10,000円
関税:5,000円 → 輸入消費税 = (100,000 + 10,000 + 5,000) × 10% = 11,500円
このように、税金だけでも数万円単位になる場合があります。したがって、これを見落とすと大きな誤算になります。
リアルタイム口座を利用した実際の納付の流れを理解しておくことも重要です。以下に、輸入通関の一般的なプロセスを紹介します。 次に、これらの税金はどのように納めるべきかという点に注目しましょう。
通常、通関申告時に関税・消費税を納付しますが、クーリエ会社やフォワーダーに立替納付を依頼すると、1件あたり800~3,000円の立替手数料を請求されることがあります。これもまた、知らぬ間にコストを押し上げる原因です。
そこで活躍するのが、「リアルタイム口座」です。
リアルタイム口座は、通関時に金融機関の口座から即座に税金が引き落とされる仕組みです。そのため、輸入者自身が持っている銀行口座から直接納税できる便利な制度です。
なお、リアルタイム口座の登録・利用には費用がかかりません(出典:NACCS公式Q&A)。無料で利用でき、コスト削減にも貢献する優れた制度です。
輸入申告:通関業者に輸入申告を委託
納税額の確定:税関が関税・輸入消費税を計算
納税処理:リアルタイム口座を通じて即時に自動引き落としされる
輸入許可:税金を納付後に輸入許可される
経理処理:受領した書類をもとに、納税額を会計処理に反映
このように、リアルタイム口座を利用すれば、納税の透明性が高まり、経理処理の正確性も向上します。
リアルタイム口座を利用するには、事業者の区分に応じて「JASTPROコード(日本輸出入者標準コード)」の取得が必要になる場合があります。
法人の場合は、基本的に「法人番号」を使用してリアルタイム口座の申請が可能です。そのため、JASTPROコードの取得は任意ですが、以下のような場面では取得を検討する価値があります:
通関業者とのやり取りを円滑にしたい場合
将来的に輸出も視野に入れている場合
なお、JASTPROコードの取得および更新には費用が発生します(料金表はこちら)。したがって、法人としては、コストと業務効率のバランスを踏まえて判断するのが現実的です。
個人事業主がリアルタイム口座を利用するには、JASTPROコードの取得が必須です。これは、法人番号の代替として使用されるためです。
申請先:JASTPROコードの取得ページ
通常の取得期間:3〜5営業日(申請集中時は遅れる場合あり)
登録・更新ともに有料
輸入直前の申請では間に合わないことがあるため、計画的な手続きをおすすめします。
リアルタイム口座の導入は、関税・輸入消費税の納付を自動化し、立替手数料を削減する有効な手段です。ここでは、法人と個人事業主それぞれのケースに分けて、申請のステップをご紹介します。
法人の方は、以下の手順でリアルタイム口座を申請・利用できます:
書類を郵送後、審査・登録には通常2〜3週間程度かかります(出典)。その後、承認されれば、通関時に自動引き落としが可能になります
なお、ネットバンクをご利用の法人も増えていますが、対応していない金融機関もあるります。そのため、金融機関リストで必ず事前に確認を行いましょう。
個人事業主の方は、リアルタイム口座を利用するために次のステップが必要です:
輸入スケジュールに余裕を持って、登録手続きを進めることが重要です。
なお、ネットバンクをご利用の法人も増えていますが、対応していない金融機関もあります。そのため、金融機関リストで必ず事前に確認を行いましょう。
繰り返しになりますが、通関業者に関税や消費税の立替払いを依頼することは、場合によってはリスクを伴います。
2023年、公正取引委員会は「立替問題」に対して、独占禁止法上の懸念を示しています。立替払いを前提とした契約や強制が発生すると、公正な競争環境を阻害しかねないという判断です(詳細はこちら)。
したがって、納税義務者である輸入者が、自ら納税できる体制を構築することが法的にも実務的にも望ましいのです。
以上の通り、貿易を始めるにあたっては、商品調達や販路拡大よりも先に、「納税の準備」を整えることが肝要です。
DIGISHIPでは、貿易初心者の方がスムーズにリアルタイム口座を導入できるよう、手続きのサポートを行っております。
貿易初心者がリアルに直面する疑問を、経験と根拠に基づいて整理しました。時間やコスト、制度の細かい違いまで、納得できる形でご理解いただけます。
A. 通常3〜5営業日程度ですが、申請が集中する時期は1週間ほどかかることもあります。商品輸入直前の手続きでは間に合わない可能性があります。そのため、早めの準備をおすすめします。
A. 一部のネットバンクは未対応です。必ず事前に、リアルタイム口座対応金融機関か確認してください。
A. 実際に輸入通関を行う時点で取得すれば問題ありませんが、輸入予定があるなら早めに取得しておくと安心です。
A. いいえ、登録・利用は完全無料です。NACCSセンターによる公式見解でも、手数料等は発生しないと明記されています(出典)。
A. 必須ではありません。法人番号がある場合はリアルタイム口座申請に使用できます。ただし、JASTPROコードがあると通関業者とのやり取りがスムーズになる場合もあります。取得・更新には費用が発生します(料金詳細はこちら)。
A. 必要書類をNACCSセンターへ郵送してから、通常2〜3週間程度の審査・登録期間がかかります(参考)。そのため、輸入直前の申請では間に合わないことがあります。
A. はい、利用可能です。ただし、法人と異なりJASTPROコードの取得が必須になります。申請から取得までは通常3〜5営業日ほどかかり、費用も発生します。輸入予定の前に余裕を持って手続きしましょう。