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アパレル貿易業界の専門用語大全|企画提案フェーズで使う言葉まとめ【2025年版】

アパレル貿易

「 アパレル貿易 用語大全 2025年版|専門用語まとめ 」

これを読むと、

繊維・アパレル貿易業界の現場で実際に使われている専門用語の意味と使い方を、会話例を通して体系的に理解できます。

目次

はじめに|専門用語は、アパレル貿易業界理解の“カギ”になる

実録|企画段階での業界トーク(あるある会話)

用語解説|企画・提案フェーズで使う繊維業界用語

おわりに|用語を味方につけると、業務効率が劇的に変わる

はじめに|専門用語は、アパレル貿易業界理解の“カギ”になる

アパレル貿易の専門用語解説

繊維業界やアパレル貿易の現場では、日々さまざまな専門用語が飛び交っています。

実際、慣れてしまえば難しく感じない用語ばかりです。しかしながら、入社したばかりの頃は、その言葉の意味がまったくわからず戸惑った方も多いのではないでしょうか。

なぜなら、この業界は“スピード”と“正確さ”が命です。なぜならば、短い会話の中でも効率的に伝達するために略語や業界用語が多用される傾向があるからです。そのため、会話の流れを止めてまで意味を尋ねるのは気が引けるという新人も多くいます。結果として、自己解決を余儀なくされる場面も少なくありません。

これってどういう意味?

かく言う筆者も、繊維商社に入社した当時は、会話の中に登場する数々の専門用語に圧倒され、「これってどういう意味?」と心の中で何度も叫びながら、会話の流れを止めないよう必死にメモを取っていました。そして、あとから先輩に確認していた記憶があります。

「今回は、SHIPではなくてAIR、あ、AIRっていうのは飛行機で荷物を飛ばすことで、、あ、飛ばすって輸出のことね。

通常はSHIP出荷するんだけと、なぜ今回AIRかというと、検品で、あ、検品っていうのは商品をA品B品、あの、A品っていうのは商品をチェックして問題がないもの、B品っていうのは傷、汚れとは不良品のこと。で、検品したらB品多発して、、、」

なんて単語全てに補足が必要で全く説明が進まなかったこともありました。

用語解説、アパレル業界

共通言語としての専門用語解説

また、部署異動や新規プロジェクトへの参加時など、環境が変わるごとに使われる用語や頻度にも違いがあります。そして、ある程度キャリアを積んだ人でも、「この単語は初耳…」ということが起こり得ます。だからこそ、“共通言語”としての業界用語をしっかり理解しておくことは、自分自身の武器にもなります。

業界対応力の実力

さらに言えば、用語理解は単なる語彙力の問題にとどまりません。正確な言葉を使いこなせることで、上司や取引先からの信頼感も向上し、説明能力や説得力のあるプレゼンにもつながっていきます。特に、アパレル貿易業界はスピード勝負な側面が強いため、専門用語を知っているか否かで、同じ案件に対する対応力に差が出ることもあるのです。

そこで今回は、【実録|企画段階での業界トーク】で特によく使われる用語を、会話形式のリアルな事例とともにわかりやすく解説していきます。

実録|企画段階での業界トーク(あるある会話)

~お客様からのメール~

次のSSのキックオフが●月△日にスタートします。

つきましては、提案サンプル等ご手配、云々かんぬん……。

企画会議は■月△日予定ですので、それまでに1点サンプル、云々かんぬん……。

出来れば各色で揃えたいので生地のご手配もお願いしたいです。

(※心の声:いや、それ1点じゃなくて各色全部やん……)

~営業サイドの社内会話~

サンプル作成の計画から

「 メール来ましたね。

  会議■月△日ってなってますけど、ちょうど旧正月ですね。

  先に生地工場と縫製工場の休暇日を確認しておきます。 」

「 今日午後の商談が終わったらMR行ってきますね。

  あの定点観測してるお店、最近面白い素材増えてるんですよ。

  良さそうなの見つけたら、素材提案用に買ってきます。 」

「 ブレストもそろそろ日程決めましょう。

  デザイナーも呼びたいですし。 」

「 会議まで時間ないですよね……。

  サンプル反のリードタイム14日でしたっけ?

  FWの企画でキバタ手配してたと思うんですけど、残ってるか確認します。

  もしなければ、BULKと共通の品番使えるかどうか確認したほうがいいかも。 」

「 お客様にはPANTONEで色指示を急いでもらって、すぐにビーカー進めるよう手配します。 」

「 今回、先染めもあるみたいですね。

  BROSS番号もらったので、糸手配して、似寄り生地がないかも合わせて聞いておきます。

  もし着分でもあれば、先に縫製工場へ送って会議用サンプルに回します。 」

「 この仕様は全サイズ必要なので、グレーディングも同時進行でいきます。 」

いよいよサンプル作成

「 継続素材の他に、目付を重くした新しい生地を希望されてます。

  まずはスワッチ取り寄せて、良さげな素材を選定し、サンプル反作成しておきましょう。

  会議にはハンガーで提出すれば良いみたいです。 」

「 生地工場からキバタ在庫ありって連絡ありました。

  ビーカー確認後、即染色に入れそうです。

  ただし●日までにコメントが必要とのこと。

  サンプル釜開けて待っててくれるそうなので、急ぎましょう。 」

「 前回、濃色の堅牢度が悪かったですよね。

今回も生地試験出して、リスクは事前にお客様に説明しておいたほうがいいです。 」

アパレル貿易の専門用語会話

~時は流れ、会議サンプル出荷間近~

「 大変です!サンプルCが間に合わないって工場から連絡ありました!

AとBは本日中にクーリエで出せるそうですけど……。

生地がまだ仕上がっていないらしくて、Cだけ間に合いません! 」

「 明日午前中に生地が届けば、すぐにサンプル作成してHAND CARRYします。

そうすれば、会議にはなんとか間に合うと思います! 」

このように、現場では日常的に専門用語が混じった会話が飛び交います。

次の章では、これらのキーワードを一つずつ丁寧に解説していきます。

専門用語解説|企画・提案フェーズで使うアパレル貿易業界用語

SS、FW(AW)

SSは春(SPRING)夏(SUMMER)シーズンの商品のこと、FW(AW)は秋(FALL/AUTUMN)冬(WINTER)シーズンの商品のことを言います。 それぞれの季節の頭文字をとっています。

読み方としては SS=エスエス、FW=エフダブ、AW=エーダブと読みます。

繊維業界で働いている方だけでなく、ファッションが好きな方であればお馴染みの言葉ですね。

各ブランドによりシーズンごとに企画会議を行っております。会議時期は異なりますが、 筆者が担当していたブランドは1年程前に企画会議が始まり、その半年後に初回納品予定で企画決定しておりました。

例えば、2025年のSSシーズンの場合、2024年の春に企画会議をして、2024年の冬に納品を開始、25年新春より販売を開始する計画です。

MR(マーケットリサーチ)

市場調査のことで、様々なブランドの店舗に行き、どのような商品が展開されているかを調査、情報収集、分析などを行います。

アパレルの場合、服の仕様だけでなく、どのような素材が使われているか、機能系素材など面白そうなものがあるか情報収集し提案に生かします。

定点観測

同じ店舗を定期的にリサーチする事。例えばどのようにメインに押し出すもの(売りたいもの)が変わってきているか、前回からどう変わっているか(消費者がどのようなものを求めているか)を定期的に調査することにより、ターゲットが必要なもの、今後どのように提案し展開していくかの情報をまとめていきます。

素材提案、企画提案

素材提案は、生地の状態で提案を行うこと。例えば、秋冬素材を提案してほしいと依頼があれば、ボア、ファー、ウール100%、ウール100%高いので、ウールライクな素材の提案など準備して提案を行います。

企画提案は、素材ではなくアイテムを提案することを言います。バッグの場合、今までは大、小の2サイズだったが、更に大きな旅行バッグと、付随するポーチを提案、、などです。

旧正月

旧暦におけるお正月のこと。中国、台湾、韓国のほか、ベトナムも正月は旧暦でお祝いをします。(ベトナムはTET HOLIDAY と言います)

旧正月の前後1週間もお休みになる工場もあり、サンプルなど手配するときにはかなり要注意。 特に生地工場などが1か月工場をお休みにすることも多く、旧正月前に生地をあげて欲しいときは、早めに手配をしないと生地がまったく出来上がらなくなってしまいます。

サンプル

サンプルとは試作品のことですが、更に細かく分類されております。

1stサンプル

初めて作るサンプルのこと。もしくは、企画会議で初めて会議に提出サンプルのことを指す場合もあります。

2ndサンプル

1stから修正をしたサンプル。

(その後、修正を重ねるたびに3rd、4ce,,,,と続きます。 工場へは2ndからの修正、などどのサンプルからの修正変更となるか指示ができます)

決定サンプル

最終仕様が確定したサンプルのこと。 各ブランドにより企画承認サンプルや、APPROVALサンプル、FINALサンプルなどと呼ばれることもあります。

納前サンプル

量産品を出荷する前に、実際に量産した製品から抜き取り梱包した商品。商品や梱包方法など問題がないか確認をする商品のこと。先上げという場合もあります。

撮影サンプル

広告や通販サイトなどに乗せる写真を撮影するための商品のこと。

撮影は本生産品が納品される前に行われることが多いため、量産品とは別途準備する場合もあります。

バルク(BULK)

量産、本生産のこと。

グレーディング(GRADING)

グレーディングとは、サイズ展開することです。

たとえば1stサンプルはMサイズで作成した場合、Lサイズ、XLサイズなどグレーディングが必要になります。

あり生地

縫製工場にある在庫生地のこと。

1stサンプルなど、代用素材で形の確認だけ先に進める場合工場あり生地で作成することが一般的です。

着分(ちゃくぶん)

主にサンプルを作成するために取り寄せ(注文)をする生地のことを言います。

サンプル1着分の生地の数量のことから<着分>と言われているようです。

数量としては1m前後になりますが、これも客先により曖昧なので、注意が必要です。

生機(キバタ)

染める前の生地のこと。サンプル作成用に生地を準備する場合、事前にキバタを準備しておくことで生地の作成期間を短くすることができます。

トップ染め/先染め/後染め

生地の染色方法のこと。

トップ染めとは綿の段階で染め工程を行う

先染めとは糸の段階で染めてから生地織り工程を行う。 

後染めとは、生地を織った後に染色工程を行う。(キバタを染めること)

PANTONE

次に紹介するのは、色指示の際に頻出する「PANTONE」です。これは、世界中で共通して使用されている色見本帳の名称であり、色の名称ではなく“番号”で正確に伝えることができます。

米国PANTONE社が提供している色見本帳、カラーマッチングシステムなどのこと。

カラーは共通でも、紙、コート紙、生地、プラスチックチップなど種類がいくつかあります。

とりわけ繊維業界では、紙チップ(TPG)や生地チップ(TCX)といったタイプのPANTONEが主に使われています。これにより、デザイナー・生地工場・染色工場との間で色の共通認識を持つことができ、トラブルを大幅に減らすことが可能になります。

さらに、PANTONEは新色の追加や廃盤情報なども定期的に発信しており、流行色の選定にも活用されています。そのため、トレンドに敏感なアパレル業界では欠かせないツールです。

BROSS

「Original Garment Brothers(オリジナルガーメントブラザーズ)」の略。

杢糸見本帳。PANTONE同様、世界共通の色見本帳。

ビーカー(BT/BEAKER TEST))

生地を染色する前に、指定した色に染めるために生地工場が染料の配合を決め確認するために作った色確認用の生地のこと。

実際に染める前、A,B,C など3種程度ビーカーを作り色確認。問題なければ生地を染色します。

先染めの場合は糸の段階で染める必要があるため、糸ビーカーを作成し確認を行います。

サンプル反/見本反

見本として試作した生地のこと。生地の種類によりけりですが、10m~試作可能なものや、一気に50m出来上がる場合もあります。

基本的にはサンプル反がOKの場合、この生地を基準に量産へと進みます。

また、見本反の生地を使用し生地検査や撮影サンプルを作成することもあります。

スワッチ(SWATCH)

続いて「スワッチ」です。これは、手のひらサイズ〜A4程度にカットされた小さな生地見本のことを指します。

このスワッチを活用することで、素材の色味・手触り・風合い・厚みなどを事前に確認することができます。特に、量産前の段階で素材の方向性を決定するためには非常に重要な役割を果たします。

また、スワッチは取引先に簡単に郵送できるため、遠隔地との素材確認にも便利です。加えて、複数素材の比較検討を行う場合にも重宝します。そこで、見本反がUPした後、スワッチで送ってと生地工場に依頼するとA4台紙位のサイズにカットした生地を送付してきます。

ハンガー(HANGAR)

一方で「ハンガー」「ハンガーサンプル」と呼ばれる生地見本は、スワッチよりも大きな面積を使って作られるため、よりリアルな素材感の確認が可能です。

ハンガーヘッドをつけた状態の生地見本のこと。

スワッチよりも大きく生地を入手したい場合、ハンガーで生地の取り寄せをします。

たとえば、チェック柄やボーダーなどパターンのある生地では、小さいスワッチでは全体像が掴みにくい場合があります。そのようなとき、ハンガーを使えば、柄の繰り返しや配置バランスなどを具体的に判断することができます。

さらに、ハンガーは展示会や営業提案時に持参することで、相手に視覚的インパクトを与えます。その結果、提案の説得力を高めるツールにもなります。

目付(めつけ)

続いてご紹介する「目付」は、素材の物理的な特性を知るうえで極めて重要な情報です。これは、生地1平方メートルあたりの重量を表し、「g/㎡」という単位で表記されます。

つまり、生地の重さのこと。基本的に単位はg/㎡(1㎡あたりの生地の重さのこと)だが、g/m(幅なり)で管理している工場もあるため要注意。

目付が軽いとドレープ性に優れたやわらかい素材に、重ければ厚手で防寒性の高い素材になります。つまり、目付の数値を把握することで、見た目や手触りだけでは分からない「用途適正」や「着用感」が理解できるのです。生地の目付が分かると、180g/㎡のパイルはこんな感じの厚みだな、360g/㎡だと重いからコスト高そうだな、、、なんて簡単な想像ができるようになります。

また、製品コストの試算にも大きく影響します。重量があるほど使用糸量が増えるため、生地原価も高くなる傾向があります。

サンプル釜

生地工場で少量ロットを染色する時に使用する小さい染色釜。

量産生地を作る染色釜は大量に生地を染めることができます。

染色堅牢度(COLLAR FASTNESS)

次に取り上げる「染色堅牢度」は、繊維製品における品質管理の指標のひとつです。これは、染色された生地が摩擦や水濡れ、汗、光などの外的要因によってどれほど色落ちするかを評価したものです。つまり、染色堅牢度とは、染料などで染色された生地の染色の色の変化や、色落ちについて等級を測るものです。

例えば、日差しで色が抜けるか=耐光、水濡れで色移りしないか⇒摩擦堅牢度、汗で濡れた服が下着に移染しないか=汗堅牢度など、色に関する検査を総称して染色堅牢度と呼ばれます。さらに、ジーンズが他の衣類に色移りしないか、Tシャツが洗濯後に褪色しないかなどを確認する際に使用される試験項目です。

染色方法では、TOP染めが最も堅牢度がよく、ついで先染め、生地染めの順となります。

また、堅牢度は1級〜5級で評価され、数字が大きいほど色が落ちにくいことを意味します。ブランドや販売国によって求められる等級が異なるため、輸出入業務にも密接に関係します。

クーリエ(COURIER)

国際宅配便のこと。OCS、DHL、FEDEXなど。

仕向け地や会社によって使用できるクーリエが異なるので発送前に事前に確認しておくと安心。

ハンドキャリ―(HAND CARRY)

最後に紹介する「HAND CARRY」は、物流の現場で緊急対応が必要な場面で登場する言葉です。これは、宅配業者(クーリエ)を使わず、人が直接サンプルや資料を手荷物として持参する配送手段のことを意味します。

通常の宅配便に比べ、配達スピードは各段にUPするが料金が高いです。そのため、本当に緊急の時しか使用したことがないです。

たとえば、「展示会に間に合わせる必要がある」「海外の得意先と明日会議がある」といったシチュエーションでは、スピードが最優先されます。その場合、航空券を取り、スタッフ自身が持っていくという手段が選ばれます。

もちろんコストは高くなりますが、納期厳守が絶対条件となる場面ではこの方法が有効です。まさに“最後の砦”として覚えておきたい用語です。

デッドライン(DEAD LINE/DL)

最終の締切日。

リードタイム(LEAD TIME/LT)

各工程にかかる時間。

EXF(EXIT FACTORY)

工場出荷のこと。 サンプルなど発送してもらう場合、着日ではなく工場出荷日を指定します。

繊維アパレル用語解説一覧

おわりに|用語を味方につけると、業務効率が劇的に変わる

ここまで、企画・提案フェーズにおいて実際によく使われる繊維・アパレル貿易業界の専門用語を一挙にご紹介してきました。

これらの用語を理解しておくことで、社内外とのコミュニケーションが円滑になり、仕事のスピードと精度が格段に上がります。また、初めは難しく感じる言葉でも、日々の業務で何度も使ううちに自然と身についていくものです。

加えて、専門用語を正確に理解していることで、現場での信頼も高まり、アパレル貿易業務全体の品質向上にもつながります。とりわけ、アパレルや繊維業界では「共通言語」としての役割が非常に大きいため、覚えておいて損はありません。

今後は「量産フェーズ」や「品質管理フェーズ」で使用されるアパレル貿易の専門用語集も順次公開予定です。ぜひそちらもあわせてご覧ください。

あなたのアパレルキャリアが、よりスムーズで楽しいものになりますように!