SPAの生産現場では、日々トラブルとの戦いが続いています。

こんにちは。
2010年から2020年の10年の繊維貿易に関して紹介させて頂いています。
今回で早くも6回目の記事となります。
今回も、前回に引き続きSPAとの取組、その中でもSPAの生産進捗管理に関して記載させていただきます。
先ず、簡単に前回の記事の振返りをさせて頂くと、
SPAでは「売れる商品を即追加生産する」スピードが競争力となります。
そのため、生産進捗管理は単なる工程管理ではなく、売上に直結する重要な機能となっています。
販売データをもとに生産を調整できる点がSPAの強みであり、
スピード・効率・品質の面で大きなメリットを持つビジネスモデルです。
生産進捗管理は、前半、中盤、後半3段階に分けられます。
前回の記事では、その前半部分の生産進捗管理に関して解説しました。
今回の記事では、中盤&後半の生産進捗管理に関して詳しくお話させて頂きます。
本記事では、中盤から後半にかけて、特にトラブル対応に焦点を当てて解説します。
本生産前の最終準備では、トライアル生産と品質基準のすり合わせが極めて重要になります。

前回の記事で紹介させて頂いた通り、工場の生産計画に併せて原材料である、生地を始めとする資材が揃うといよいよ本生産が始まるのですが、、、
直ぐに生産と云う訳には行きません。
その前にトライアル生産を行い、問題点を抽出して不良品の目合わせを行います。
更に、出来た製品を第三者機関に拠る製品検査等を実施して、製品としての瑕疵が無いかの確認を行います。
前回の記事「SPAにおける生産進捗管理(前半)」では、その前半部分について解説しました。
このトライアル生産は、本番製品に使用する原材料を使って、実際に製品を生産するラインで、本生産と全く同じ条件で生産します。
特定のラインを使って、数日間生産して、
生産上の問題は無いか?
もともと想定していた生産効率で生産出来ているか?
これらを、不良発生の有無等をチェックします。
品番にも拠りますが、数百枚から1000枚に満たない位の生産をします。
普通のお客さんの場合は、それで生産完了する場合もあり得る位の量ですが、、、
このような管理は、前半の生産進捗管理でも重要なポイントとなります。
トライアル生産を行った後でやる事の中で特に重要なのが、不良品に対する目併せです。
それは何かと言うと、
トライアル生産で発生した代表的な不良品を基に、製品の良品、不良品の確認を行うという事です。
どの製品でも共通の汚れや、縫い外れなどの明らかな不良は目併せを行う必要はありません。
しかし、当然ながら、不良の発生の箇所と云うのは製品に拠って異なります。
例えば、特定の箇所の縫製が難しい場合、そこに縫製不良が多発します。
そして、デザインや仕様の問題上、どうしても不良が発生する。
もしくは、不良なのではと考えられる不良もあります。
それらに対して、事前にSPA側とも不良の目併せをし、本生産に入った時にいきなり大量の不良が発生しない様にしたりするのです。
その上で、この目併せはとても重要なのです。
一見不良に見えるが製品の特性上、
もしくは、生産の特性上、避ける事の出来ない問題等を事前に
しっかりと説明を行い、不良品では無く、A品と認めて貰う事が非常に重要でした。
無論、着用に問題無い、品質上の瑕疵は無いのは当然ですが、、、
今思い返すと、この目併せの時の話題になるのは、商品としての見た目の問題、例えば柄の見え方とか、色の見え方に拠る事が多かったです。
デザインの特性上、
どうしても柄併せが出来なかったり、同じ生地を使っても生地の方向でパーツに拠って色が微妙に違って見えたりする製品があったりすることがあります。
しかし、SPAの現地事務所の担当者が製造工程を理解出ずに、
ちょっと柄がずれている
色が違って見える
と云う事で不良品と見なしてしまうのです。
これらは、普通の一般のお客さんでは気が付かない位細かな部分です。
そのため、当然ながら着用にも問題はありません。
そして当然ながら、この様なデザインに対する取り決めは、事前に日本で製品企画の際にデザイナーさんともしっかり打合せします。
また柄併せ、生地の方向などは、裁断方法とも関わる為に生産コストにも影響があります。
よく言うのは、生地を差込(入れ違い)で裁断するよりも、
全て同方向で裁断する方が当然ながら1着当たりの生地の必要量は多くなります。
なので、明らかに毛並みがある生地、例えばファーや、フリースといった生地以外では、差込で裁断する事が多かったです。
この場合、同じ製品の中でパーツ毎に生地の方向が違うという事は無いです。
しかしながら、店頭に並んだ際に同じ製品でも順目、逆目の2種類が生地の方向が違う場合が出て来ます。
光の当て方を変えて、よ~く見れば何となく色が違って見えたり。
手で慎重に触ってみると何となく生地の地の目が違う事が判るとった、レベルの差です。
同じく、柄併せに関しても全てのパーツで柄を併せる事は不可能です。
そして、柄併せをすればするほど、用尺が掛かかります、
その上に、柄併せの管理の為の手間暇は半端ないです。
(手間暇が掛かるだけ生産効率は下がり、加工賃は上がる)
そのため、どこまで柄合わせをするかというのは、
デザイナーさん、MDさんとしっかりと、打合せしていました。
価格面を考量しても主要パーツの継ぎ目部分を併せると云うのが多かったです。
その様に、柄併せに関しても、生地の方向に関しても、日本で取り決めしている以上は、
SPAの現地事務所の工場担当者に不良品と言われる筋合いの問題では無いのですが、、、
工場で製品を見て独断で基準を変える。
もしくは、変更する様に要求してくる事が本当によくありました。
そうなると、もう工場と現地SPA担当者との喧嘩に発展します。
工場にしてみれば、柄併せや、生地の目の方向は裁断のやり方に関わって来ます。
そのため、当然ながら用尺アップに拠るコスト増、柄併せの為の加工賃アップは、だれが負担するのか?
それとまた、生地の用尺が変わって来ると、事前に手配した生地が足らなくなります。
当然ながら、オーダー数量に対して生産数量の減産が発生する事となります。
その為、工場にしてみれば、簡単にOK出来る話ではありません。
まあ、こういうトラブルの時に出て来て解決するのが筆者の仕事でした。
そこで、SPA側の要望を聞きつつ、工場とも妥協点を探して行く様にします。
基本的には、製品の企画の時点で取り決めした事を反故にして、基準を厳しくしているSPA側の問題です。
そのため、日本の担当者も絡ませつつ。
かといって、現地SPA事務所の担当者のメンツも守りつつ、対応する様にしていました。
(怒らせるとめんどくさいのでね、、、まあ、これは冗談ですが。)
このような品質基準のズレは、最終的に生産コストや納期にも大きな影響を及ぼします。
日本でもともとデザイナーさんやMDさんと決定した柄併せの基準や、生地目の方向を、実際に現場で製品を見たら
「柄があって無い部分の見栄えが悪い」
とか、
「同じ生地の同じ色を使って居るのに色が少し違って見える」
とかいう理由で、全てを不良品と見なしたりするのです。
本当に、日本での商談はなんだったのかと思ってしまうのですが、、、
これは、工場現場での製品の品質に対する責任は、その工場担当者が持っていた為なのです。
品質要求に妥協は出来ないと云うのがその担当者の主張でした。
そんなこんなで、ようやく本生産が始まる事となります。
次項では、本生産が始まった後での生産進捗管理についてお話させて頂きます。
ちなみに、トライアル生産で作った1000枚弱の製品は、A品と認定された製品に関して、正規品として出荷可能です。
先ほどお話した様に、やっとの事で始まった本生産です。
それでも、本生産が始まったからと言って後は、製品が上がって来るのを待つだけと言う訳にも行きません。
その後も、諸々の管理を継続して行かなければなりません。
先ず、日々の日産数の進捗も管理して行かなければなりません。
一日当りの計画生産量に対して、
、、、等々です。
SPAのオーダーは、数量がとても多いです。
そのために、日々の生産数量をしっかりと管理します
そうでないと、気が付いた時に大幅な減産なんてことになったら、後からリカバリーする事も困難です。
そのことから、計画に対する日々の生産進捗は本当に細かく管理していました。

また同様に、日々の不良率も細かくチェックしていました。
通常は、1%程度の不良率だったとします。
ある日突然、それが5%に悪化した場合、その差4%分の商品が減産する事に繋がります。
また、その原因が何でなのかも分析が必要です。
工員が入れ替わった為とか、人的要因であれば良いです。
ところが、大幅な不良率の悪化が、原材料不良等の特殊要因で起きている事が多かったです。
それに対する、改善行動も必要不可欠でした。
例えば、不良の原因が原材料の生地に汚れが発生していたり、キズがあったり。
このような場合は、工場に有る全ての原材料生地を、再度検反(生地の検品の事)し、不良生地の量を確認します。
その上で、当然ながら原材料はオーダー数量に通りに発注しています。
そのために、不良の分の生地は、再手配しないとオーダー数量に対して減産する事になってしまいます。
その分の原材料の再手配を直ぐに原材料工場、生地の場合は生地工場とかと連絡を取り、
補充の生地を手配して出荷する様に要請します。
発生した問題の解決の為に、SPAの現地担当者とも商談したり、
不良の内容に拠っては生地工場も呼び寄せて補充生地の納期を交渉したり、
これまた大変でした。
その場合、
等も考量しながら対応策を練って行く様にします。
筆者の場合は、ベトナムの工場で生産する事が多かったのですが、生地は中国から輸入している事が多かったです。
その為に、再手配したとしても再手配する生地の生産リードタイムとは別に、生地の輸送時間(約10日)も掛かります。
その場合は、生地だけ航空便で中国からベトナムに取り寄せしたりしていました。
それでも、製品をベトナムから日本に出荷するよりは、コスト的に大幅に安かったからです。
ともかく、生産中、とりわけ生産初期は本当に毎日色んな問題が発生します。
問題は、逐一SPA側に共有しなければなりません。
更に、報告の仕方も
これらを、整理して報告しなければなりませんでした。
そのため、なかなか骨のある業務でした。
本生産時の現地での生産進捗管理は、本当に大変でした。
毎シーズン生産が始まる頃は、工場に中期1ヶ月単位での出張をして、工場に張り付いて管理をしていました。
朝から晩まで工場にいました。
工場は、基本的に、土曜日も稼働しているので、土曜日も仕事して、それはそれで大変でした。
しかしながら、
朝晩の通勤ラッシュや、無駄な打ち合わせや会議の煩わしさからは解放された工場での業務は、
個人的に筆者は好きでした。

本生産の時期になると、週に1度、現地SPA事務所の工場担当者が、工場の色んな事のチェックにやって来ました。
などを実施します。
大体午前中に来て、夕方帰って行くイメージでほぼ1日その対応に費やされます。
工場にやって来ると色々と細かい事を指摘し改善要求して来るので、
煙たい存在であったのは間違い無いです。
しかし、SPA側も生産の事を現場任せにしていませんでした。
工場担当相者を配置し、生産現場に入り、納期の確認、品質の確認、工場の確認などをSPA自身が行っていました。
それは、本当にSPAが責任をもって生産して行こうとするスタンスの表れだったんだと思います。
製造から販売まで一貫したプロセスを管理するというSPAの強みの神髄はここにあったのでしょう。
SPAビジネスにおいては、単に計画通りに生産するだけでは不十分です。
市場の変化や現場で発生するトラブルに対して、迅速に判断し対応する“現場対応力”が求められます。
特に以下の3点が重要です。
・問題発生時の即時判断力
・関係者(工場・SPA・素材メーカー)との調整力
・納期・品質・コストのバランスを取る意思決定力
これらはマニュアル化が難しく、経験と実務を通じて培われるスキルです。
それこそが、アパレル商社の付加価値そのものと言えます。
本生産が始まると、日々の進捗管理、不良対応、納期調整など、現場では常に課題が発生します。
その一つ一つに対応しながら、最終的に商品として市場に届けること。
これこそが、アパレル商社の重要な役割です。
これらの現場対応こそが、SPA時代における生産進捗管理の本質と言えるでしょう。
次回は、シーズン後半における生産進捗管理について解説します。
SPAの最大の強みである「販売データを活用した生産最適化」がどのように実現されているのか、その実態に迫ります。
よろしくお願い致します。
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