

筆者が初めてベトナムへ出張したのは、2010年頃だったと思います。
当時担当していたのは、ホーチミン近郊にある縫製工場でした。
それまでは、中国の上海や南通近郊にある工場を担当する機会が多く、海外出張といえば中国へ向かうことがほとんどでした。
そのため、初めてベトナムへ向かうときは、中国出張とはまた違った緊張感がありました。
ベトナムは東南アジア有数の製造拠点として発展を続けており、日本企業の進出も進んでいます。
ベトナムの基本情報については、日本アセアンセンターの紹介ページも参考になります。
空港の外へ出た瞬間に感じたのは、東南アジア特有の高温多湿の空気でした。
そして、目の前を絶え間なく走り抜けていく大量のバイク。
あの街の騒がしさと熱気は、今でも鮮明に覚えています。
中国の工場周辺とは、街の雰囲気も交通事情もまったく違いました。
「同じ海外工場への出張でも、国が変わると、こんなに空気が違うんだ。」
そんなことを感じたのが、ベトナムに対する最初の印象です。
当時は、ホーチミン市内のホテルに宿泊し、工場までは車で約1時間かけて通うのが基本でした。
毎朝、ホテルまで工場の車が迎えに来ます。
その車に乗り、現地スタッフや営業担当者と一緒に工場へ向かうのが、出張中の日課でした。
この移動時間も、現地スタッフとの大切なコミュニケーションの場でした。
仕事の話だけではありません。
そうした何気ない会話を重ねながら、毎朝工場へ向かっていました。
今振り返ると、この1時間の積み重ねも、現地スタッフとの信頼関係を築くうえで大切な時間だったと思います。
ベトナム出張では、朝に日本を出発し、現地の昼過ぎに到着する便を利用することが多くありました。
成田空港からホーチミンまでは、およそ7時間。
午後2時頃に空港へ到着すると、迎えの車に荷物を積み込み、そのまま工場へ向かいます。
午後3時頃には工場へ到着。
到着したばかりですが、ここからすぐに仕事が始まります。
とはいえ、工場へ着いて最初に行うことがあります。
それは、日本から持参したお土産を渡すことです。
これは毎回欠かせない、大切な仕事でした。
久しぶりの再会を喜び合った後は、資料を広げ、すぐに打ち合わせを始めます。
次のような項目です。
・今回の出張で確認する企画
・生産スケジュール
・サンプルの進捗
・直近で発生している問題
・今回の出張中に解決したい課題
これらを整理し、現地スタッフと出張中のスケジュールを共有します。
当時担当していた工場の定時は、午前7時30分から午後4時頃まででした。
そのため、到着初日は時間との勝負です。
事務所での打ち合わせを長引かせてしまうと、確認したい縫製ラインが終わってしまいます。
そこで、まずはラインが動いているうちに現場へ入ります。
縫製中の商品や作業状況を確認し、必要に応じて製品を数点抜き取ります。
確認するのは、次のようなポイントです。
・縫製状態
・製品の仕上がり
・作業手順
・仕様どおりに生産されているか
・気になる不良が発生していないか
現場での確認を終えた後は、事務所へ戻り、現地担当者と簡単な打ち合わせを行います。
ここでは、初日に確認できた内容と、翌日以降に詳しく確認する課題を整理します。
そして、ようやく初日の業務が終了です。
夜はホーチミン市内へ戻り、現地スタッフと夕食をとってからホテルへ向かいます。
日本を出発し、7時間のフライトを終えたばかりでも、工場へ到着したその日から、生産管理の仕事は始まっているのです。
2日目以降は、朝から工場へ向かいます。
午前8時頃のホーチミン市内は、どこを見てもバイクでいっぱいです。
ローカルスタッフの中には、小柄な女性でもバイクで通勤している方がたくさんいました。
日本ではあまり見かけない光景だったため、
「こんな小柄な女性が、毎日バイク通勤なんだ!」
と、毎朝のように驚いていました。
せっかくの移動時間なので、パソコンを開いて、少しでも仕事を進めたいところです。
ところが、筆者は車の揺れがどうしても苦手でした。
パソコンの画面を見ると、すぐに車酔いしてしまいます。
一方、隣に座っている営業担当者は、揺れる車内でも平然とパソコン作業を続けています。
「この人の三半規管、どうなってんねん。」
心の中でそう思いながら、筆者はそっと目を閉じるしかありませんでした。
工場へ到着すると、朝から会議が始まります。
出張中に行う主な業務は、次のとおりです。
・生産会議
・開発会議
・サンプル確認
・縫製ラインの確認
・品質確認
・現地スタッフとの個別打ち合わせ
出張中に解決しなければならない課題が、次々と出てきます。
日本からメールで指示しているだけでは見えなかった問題も、現場へ行くとすぐに見えてきます。
例えば、次のような点です。
・生産ラインは予定どおり進んでいるのか
・必要な生地や附属はそろっているのか
・不良品はどの程度発生しているのか
・サンプル室では優先順位どおりに作業が進んでいるのか
・生産担当者とSHIPPING TEAMの情報は一致しているのか
こうした点を一つずつ確認し、その場で関係者と調整していきます。
そして、翌日また進捗を確認する。
一見すると、地味な仕事かもしれません。
しかし、この繰り返しがなければ、生産は予定どおり進みません。
問題は、会議を開いただけでは解決しません。
現物を見て、担当者と話し、対応方法を決め、次の日にもう一度確認する。
この積み重ねこそが、生産管理の仕事なのです。
ベトナム出張では、帰国便が深夜発になることも多くありました。
そのため、最終日も朝から工場へ向かい、日中は通常どおり仕事を進めます。
帰国後に現地スタッフへ対応してもらう内容の共有。
限られた時間の中で、確認できることを一つずつ終わらせていきます。
最後の打ち合わせを終えた後は、現地スタッフと夕食をとります。
その後、ホテルへ戻って荷物をまとめ、チェックアウト。
そのまま空港へ向かいます。
深夜便でホーチミンを出発し、翌朝早く成田空港へ到着するスケジュールです。
当時は、帰国日が平日であれば、一度自宅へ戻って荷物を整理し、そのまま午後から出社することもありました。
今思えば、なかなか元気な働き方です。
ただ、一度だけ大失敗をしたことがあります。
早朝に帰国し、自宅へ戻ったときのことです。
「少しだけ横になろう。」
そう思って、ベッドに入りました。
ところが、そのまま熟睡。
目が覚めると、なんと午後4時でした。
「ぎゃー! 今日、会社に行けない!」
慌てて上司へ電話し、
「申し訳ありません。本日はお休みをいただきます。」
と伝えました。
すると上司は、
「了解。ゆっくり休んで、明日からまたよろしく。」
と、いつもどおり穏やかに返してくれました。
あの一言には、本当に救われました。
今であれば、帰国日は在宅勤務にする、あるいは最初から休暇を取るという選択肢もあります。
しかし当時は、
「仕事は会社へ出社して行うもの。」
という考え方が一般的な時代でした。
海外出張から帰国したその日に、午後から出社する。
今振り返ると、かなり無理のある働き方だったと思います。
一方で、当時はそれが特別なことではありませんでした。
このエピソードを思い出すたびに、海外出張の大変さだけでなく、働き方そのものが大きく変わったことも感じます。
ベトナム工場への出張は、空港へ到着した瞬間から始まり、帰国便に乗る直前まで続きます。
工場で現物を確認し、関係者と話し、課題を一つずつ整理する。
そして、日本へ戻った後も、その対応は続いていきます。
海外出張は、単に現地へ行って会議をする仕事ではありません。
生産、品質、サンプル、物流、そして人をつなぐための、生産管理業務そのものだったのです。

企画から日本到着まで、すべてのプロセスをつなぎ、モノづくりと国際物流を動かすのが生産管理の仕事です。
国が変われば、街の雰囲気や文化、働く人々の考え方も少しずつ変わります。
初めてベトナムへ出張したときは、
「中国とはずいぶん雰囲気が違うな」
という印象を受けました。
しかし、生産管理担当者として仕事を始めると、その印象は少しずつ変わっていきました。
なぜなら、生産管理の基本業務そのものは、中国でもベトナムでもほとんど同じだったからです。
毎日確認する内容は、おおむね次のようなものです。
こうして並べてみると、とても当たり前のことばかりです。
ですが、この「当たり前」を毎日確認し続けることが、生産管理担当者の最も重要な仕事でした。
一つでも歯車が狂うと、すべての工程に影響が出ます。
例えば、生地の入荷が1日遅れるだけで、生産開始日も1日遅れます。
生産が遅れれば、検品も遅れます。
補修の日程も後ろへずれます。
そして最後には、船積みまで遅れてしまいます。
つまり、生産管理とは工場だけを見る仕事ではありません。
企画から物流まで、サプライチェーン全体を見渡しながら調整する仕事なのです。
コロナ禍を経て、オンライン会議は一気に普及しました。
今では、日本、中国、ベトナムを同時につないで打ち合わせを行うことも珍しくありません。
以前は関係者全員が同じテーブルに集まる「OTM(One Table Meeting)」が当たり前でしたが、現在ではオンライン会議で十分対応できる場面も増えています。
例えば、
このような内容であれば、オンラインでも十分に進められます。
筆者自身も、
「これなら現地へ行く機会は減るかもしれない。」
と思ったことがありました。
ところが、実際に仕事をしてみると、オンラインだけでは解決できない場面が数多くありました。
例えば、
「この附属、本当に明日届きますか?」
と質問すると、
「確認して後ほど連絡します。」
という返事になります。
B品について相談しても、
「現物を見てから回答します。」
という流れになります。
もちろん、その対応は間違っていません。
しかし、生産管理担当者が欲しいのは、
“今、この場で判断できる情報”
なのです。
納期をあと2日短縮したい。
そのためには、今日中に結論を出したい。
そんな場面では、
「確認して後ほど連絡します。」
では間に合いません。
現地へ行く最大のメリットは、
「人をその場で動かせること」
だと筆者は考えています。
例えば、
附属の納期が気になれば、その場で附属担当者を呼びます。
品質が気になれば、すぐにラインへ行き、現物を確認します。
出荷日程を変更したければ、SHIPPING TEAMにも会議へ参加してもらいます。
つまり、
「あとで確認します」
を、
「今、確認します」
へ変えられるのです。
この違いは、とても大きいと感じています。
担当者が違えば持っている情報も違います。
営業担当者は生産を知っています。
附属担当者は附属しか知りません。
SHIPPING TEAMは船積みしか知りません。
だからこそ、生産管理担当者は、それぞれの担当者を一つの場所へ集め、情報を整理し、同じ方向を向いてもらう必要があります。
その役割は、オンラインよりも現場の方が圧倒的に進めやすいと感じました。
生産管理という言葉から、
「工場の工程管理」
だけをイメージする方も多いかもしれません。
しかし、実際にはもっと広い視点が必要です。
例えば、納期を短縮する場合でも、
生産開始日を1日前倒しできたとしても、船積みが予定どおりであれば、日本への到着日は変わりません。
逆に、
早い船をBOOKINGしても、生産が終わっていなければ出荷できません。
つまり、生産だけでも、物流だけでも不十分なのです。
これらは、それぞれ別の仕事に見えます。
ですが、生産管理担当者から見ると、すべて一本の線でつながっています。
だからこそ、
「あと1日短縮できませんか?」
という一言の裏側では、
工場だけでなく、物流まで含めた調整が同時に進んでいました。
これが、中国工場でもベトナム工場でも変わらなかった、生産管理という仕事の本質です。
海上輸送の流れやコンテナ輸送の基本は、こちらをご覧ください。

同じ課題でも、オンラインと現場では、スピードも精度も結果も大きく変わります。
工場で行う生産会議は、単に予定表を確認する場ではありません。
「今、何が起きているのか。」
「なぜ、その問題が発生しているのか。」
そして、
「どうすれば予定どおり出荷できるのか。」
これらを関係者全員で共有し、その場で解決策を考えることが、生産会議の目的です。
例えば、生産開始が予定より遅れていたとします。
その原因は、本当に縫製ラインなのでしょうか。
実際には、もっと前の工程に原因があることも少なくありません。
例えば、
など、原因はさまざまです。
そのため、生産管理担当者は、
「遅れています。」
という報告だけでは終わりません。
なぜ遅れているのか。
誰が対応するのか。
いつまでに解決するのか。
ここまで整理して初めて、生産会議として意味があります。
会議が終わったあとには、
「それではお願いします。」
ではなく、
「○○さんは今日中。」
「△△さんは明日の午前中。」
というように、担当者ごとの宿題が決まっている状態が理想です。
納期を短縮したいとき、まず確認するのは、
「どこで時間を短縮できるのか。」
ということです。
生産管理では、大きく分けて
この3つを重点的に確認します。
例えば、
「ボタンが明日届けば縫製を開始できる。」
という状況であれば、その場で附属担当者を呼びます。
そして、
「本当に明日ですか?」
「今日出荷してもらえませんか?」
「航空便へ変更できませんか?」
など、サプライヤーへ確認してもらいます。
もし1日でも早められるのであれば、その1日は非常に大きな意味を持ちます。
生産管理では、
1日を積み重ねる仕事
と言っても過言ではありません。
工程ごとに、
あと半日。
あと1日。
少しずつ前倒しできる部分を探しながら、全体の納期を短縮していきます。
品質面も同じです。
例えば、
B品率が高く、補修期間を長めに見込んでいる案件があったとします。
その場合、
「本当に全部補修が必要なのか。」
現物を確認します。
例えば、
「この程度なら出荷できる。」
「これは補修が必要。」
「これはブランド基準では出荷できない。」
一つずつ現物を確認しながら、検品担当者や検品会社と判断基準を合わせていきます。
もし出荷可能数量が増えれば、その分だけ補修期間を短縮できます。
ただし、
「何でも出荷すればいい。」
という話ではありません。
ブランドの品質基準を守ることが前提です。
その上で、
どこまで許容できるのか。
この判断が、生産管理担当者には求められます。
実際には、
などは、写真だけでは分からないこともあります。
だからこそ、現場へ行って確認する価値があります。
生産会議で納期を短縮できた。
これで終わりではありません。
ここからが、生産管理担当者の仕事です。
工場では、
が別々に仕事をしています。
そのため、生産日程が変更になっても、その情報が物流担当まで伝わっていないことがあります。
実際に、
営業担当者と何度も相談し、生産日程を2日短縮できたことがありました。
「これで予定より早い船に間に合う。」
そう思っていたのですが、数日後に確認すると、以前のスケジュールのままBOOKINGされていました。
理由は単純です。
SHIPPING TEAMへ、新しい生産計画が共有されていなかったのです。
「えっ、まだ前の船を予約してたの?」
そんなことが実際にありました。
それ以来、生産会議には必ずSHIPPING TEAMにも参加してもらうようにしました。
そして、
最新の生産日程を見せながら、
「この日程でBOOKINGしてください。」
と、その場で共有します。
生産だけ。
物流だけ。
では納期は守れません。
関係者全員が同じ情報を持つこと。
これが、生産管理では非常に重要です。
オンライン会議が普及した現在でも、
現場でしかできない仕事があります。
例えば、
「附属はいつ届きますか。」
その場で担当者へ聞けます。
「このB品は出荷できますか。」
その場で現物を見ながら判断できます。
「船を変更できますか。」
SHIPPING TEAMへすぐ相談できます。
つまり、
“あとで確認します。”
ではなく、
“今、確認します。”
に変えられるのです。
この違いは、生産管理では非常に大きいと感じています。
納期を1日でも短縮したい。
品質も妥協したくない。
物流にも迷惑をかけたくない。
そのためには、
現場で判断し、
現場で調整し、
そして、現場で決断する。
これが、生産管理担当者の役割でした。
生産管理とは、単に工程表を管理する仕事ではありません。
工場、品質、物流、そして人をつなぎながら、
約束した納期で商品を届けるために調整し続ける仕事なのです。
生産管理の仕事というと、
「量産が始まってからの管理」
というイメージを持つ方も多いかもしれません。
ですが、実際には量産が始まる前のサンプル開発も、とても重要な仕事でした。
むしろ、この段階で認識のズレを修正できるかどうかで、その後の量産が大きく変わります。
日本とベトナムでは、
生活環境も違えば、流行しているものも違います。
普段目にするブランドも違います。
そのため、日本では当たり前だと思っているブランドイメージが、現地ではまったく伝わっていないことも珍しくありません。
例えば、
日本ではナチュラル系ブランドとして知られている商品を依頼したにもかかわらず、
そんなサンプルが出来上がってくることがあります。
もちろん、工場が悪いわけではありません。
担当者は、
「きっと、こちらの方が良いだろう。」
と考えて、一生懸命作ってくれているのです。
ですが、日本側が求めているイメージとは、大きく違っていることがあります。
仕様書どおりに作ることと、
ブランドの世界観を理解して作ることは、まったく別の話なのです。
だからこそ、現地へ行き、
「このブランドは、こういう雰囲気なんです。」
「このお客様は、このような商品を好みます。」
「派手さよりも、自然な風合いを大切にしています。」
という背景まで説明する必要がありました。
サンプル室では、毎日たくさんの商品が同時進行しています。
日本側では、
「このサンプルは来週の商談で使うから最優先。」
と思っていても、
現地では別の商品から作業が始まっていることがあります。
実際に、
急ぎのサンプルではなく、
「時間があればお願いします。」
と依頼していた試作品の方が、先に完成していたこともありました。
「えっ、なんでそっちから作ったの?」
と驚いたことも、一度や二度ではありません。
そこで、サンプル会議では、まず優先順位を整理します。
例えば、
というように、一つずつ確認していきます。
サンプル室も限られた人数で仕事をしています。
そのため、
「全部急ぎです。」
では伝わりません。
本当に急ぐものは何か。
そこを明確に伝えることも、生産管理担当者の役割でした。
サンプル開発では、
メールやオンライン会議だけでは判断できないことが数多くあります。
写真で見ると問題なさそうでも、
実際に手に取ると印象がまったく違うことがあります。
そこで、現地では必ずサンプルを確認しながら打ち合わせを進めていました。
例えば、
写真では同じように見えても、
実際には、
が違うことがあります。
色も同じです。
パソコンやスマートフォンの画面では、
少し明るく見えたり、
逆に暗く見えたりします。
だからこそ、
実際に生地へ触れ、
色を見て、
「これなら大丈夫。」
という確認が必要になります。
サンプルを確認していると、
本当に細かな修正依頼が出てきます。
例えば、
一般の方から見ると、
「そんな違い分からない。」
と思われるかもしれません。
ですが、デザイナーにとっては、その数ミリがブランドらしさを決める大切な要素です。
一方で、工場側からすると、
「これくらいなら同じでしょう。」
という感覚もあります。
どちらが正しいという話ではありません。
求めている品質基準が違うのです。
この認識を合わせるには、
やはり現場で一緒にサンプルを見ながら話すのが一番早いと感じました。
サンプル確認では、
生地の切れ端や附属を残しておいてもらうことがあります。
次回の会議で比較したり、
日本へ持ち帰って検討したりするためです。
ところが、
工場では作業スペースをきれいに保つことも大切です。
そのため、
きれいに片付けようとして、
比較用に置いておいた生地まで処分されそうになったことがありました。
思わず、
「それ、ゴミじゃないから!」
と大きな声を出してしまったことがあります。
もちろん悪気はありません。
工場の方から見れば、
ただの切れ端に見えたのでしょう。
ですが、日本側にとっては、
その切れ端が次回サンプルを作るための大切な見本だったのです。
こうした小さな認識の違いも、
実際に現場へ行くとよく分かります。
メールだけでは気付けないことも、
現場で一緒に仕事をしているからこそ見えてくる。
これも海外出張の大きな価値だったと思います。
生産管理というと、
納期や数量を管理する仕事と思われがちです。
もちろん、それも重要です。
ですが、アパレルの生産管理では、
ブランド品質を守ることも同じくらい重要でした。
サンプル段階で、
これらをしっかり確認できなければ、
そのまま量産へ進んでしまいます。
量産後に修正しようとすると、
だからこそ、
時間もコストも何倍もかかります。
サンプル段階で現地へ足を運び、
工場と認識を合わせることが大切でした。
仕様書だけでは伝わらないことがあります。
写真だけでは分からないことがあります。
実際に商品を手に取り、
同じものを見ながら話す。
それが、ブランド品質を守るための一番確実な方法でした。
生産管理担当者の仕事

多くの関係者と連携し、商品をお客様に届けるまでの全体を管理・調整します。
海外工場との仕事では、生産管理の知識や貿易実務だけでは解決できないことが数多くあります。
もちろん、納期や品質については、必要に応じて厳しく伝えなければならない場面もあります。
しかし、普段から十分なコミュニケーションが取れていなければ、本当に困ったときほど相談しにくくなってしまいます。
現地スタッフにとっても、日本側の担当者がどのような人なのか分からなければ、必要最低限の報告だけになってしまうかもしれません。
一方で、日頃から雑談を交えながら会話を重ね、お互いの考え方を理解していれば、
「実は、この附属の納期が少し危ないです。」
「このままだと予定どおり出荷できないかもしれません。」
そんな相談を、問題が大きくなる前に受けることがあります。
生産管理では、問題が発生してから対応するよりも、問題が小さいうちに情報を得ることの方がはるかに重要です。
早く情報が入れば、その分だけ選択肢も増えます。
附属メーカーへ納期を確認することもできます。
生産順序を変更することもできます。
物流会社へ相談し、船積みスケジュールを見直すこともできます。
つまり、コミュニケーションが円滑であることは、人間関係だけの話ではありません。
品質や納期を守るための、大切な土台でもあるのです。
海外出張では、日本からお土産を持参することが恒例になっていました。
もちろん、高価な物を渡すためではありません。
「いつもありがとうございます。」
「今回もよろしくお願いします。」
そんな気持ちを伝える、小さなコミュニケーションの一つです。
当時、ベトナム工場には、日本へ行ったことがないスタッフも多く、日本のお菓子はとても珍しい存在でした。
定番のお菓子だけでなく、キティちゃんやドラえもんなど、日本らしいキャラクターが描かれた商品も人気がありました。
また、日本へ留学した経験があるスタッフには、日本で生活していた頃によく使っていた文房具や雑貨を選んだこともあります。
あるスタッフが、
「日本の桜が好きなんです。」
と話してくれたことがありました。
次回の出張では、その話を思い出し、桜がデザインされたノートを持って行きました。
とても喜んでくれたことを、今でも覚えています。
大切なのは、値段ではありません。
相手との会話を覚えていること。
相手のことを考えて選ぶこと。
その気持ちが伝わることが、何より大切なのだと思います。
中国工場でもベトナム工場でも、現場で働く方々との信頼関係は、生産管理を円滑に進めるうえで欠かせませんでした。
もちろん、国民性だけで一括りに比較できるものではありません。
工場によっても違いますし、担当者によっても大きく異なります。
ただ、筆者が担当したベトナム工場では、日本へ留学した経験を持つスタッフも多く、日本文化に興味を持っている方が少なくありませんでした。
仕事とは直接関係ありませんが、そうした会話から自然と距離が縮まっていきました。
一方、中国工場でも、休憩時間に一緒にお茶を飲んだり、お菓子を食べたりしながら雑談を重ねることで、少しずつ関係を築いていきました。
国によって方法は多少違っても、共通して感じたことがあります。
それは、
「相手を一人の人として理解しようとする姿勢が、信頼関係につながる。」
ということです。
仕事の話だけでは、本当の意味での信頼関係は生まれません。
何気ない会話や、小さな気遣いの積み重ねが、後になって大きな力になることを何度も経験しました。
中国工場シリーズ
中国工場での生産管理については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
生産管理というと、
工程表を管理する仕事。
納期を管理する仕事。
そのようなイメージを持たれることが多いかもしれません。
もちろん、それも重要な仕事です。
しかし、実際の現場では、それだけでは十分ではありませんでした。
それぞれ立場も役割も異なります。
時には意見が食い違うこともあります。
情報がうまく伝わらないこともあります。
その間に入り、必要な情報を整理し、同じ方向を向いてもらうこと。
それも、生産管理担当者の大切な役割でした。
良い信頼関係があれば、問題は早く共有されます。
情報共有が早ければ、品質への影響も小さくできます。
納期遅延を防げる可能性も高まります。
信頼関係は数字で表せるものではありません。
ですが、海外工場で仕事をしてきた経験から言えることがあります。
品質を支えているのは、人です。
納期を守っているのも、人です。
そして、その人と人をつなぎ、工場・品質・物流を一つのチームとして動かすことが、生産管理担当者の本当の役割なのだと、筆者は考えています。
海外出張では、工場での打ち合わせが終わると、現地スタッフや営業担当者と一緒に夕食へ行くことがよくありました。
毎日のように食事へ連れて行っていただき、本当にありがたい時間でした。
ベトナム料理はもちろん、中華料理、韓国料理、イタリアンなど、ホーチミン市内にはさまざまなジャンルのお店があります。
どのお店も日本人の口に合う料理が多く、
「今日は何を食べるんだろう。」
と、夕食も出張の楽しみの一つでした。
一方で、連日ごちそうが続くと、少し胃が疲れてしまうこともあります。
そんなときに連れて行ってもらった鍋料理が、とても印象に残っています。
「暑い国なのに鍋?」
最初は少し驚きました。
しかし、実際に食べてみると、日本の鍋とはまた違ったおいしさがあります。
野菜がたっぷり入り、スープも比較的あっさりしています。
きのこ鍋や鶏鍋など種類も豊富で、数日間の出張で少し疲れた胃には、とても優しい味でした。
特に印象に残っているのが、きのこ鍋です。
日本では見かけない種類のきのこも多く使われており、
「こんな種類があるんだ。」
と驚いたことを覚えています。
きのこの旨味がたっぷり出たスープは、とても優しい味で、自然と箸が進みました。
豪華な料理ももちろん魅力的ですが、このような素朴な料理の方が、出張の後半にはありがたく感じることもありました。
もう一つ印象に残っているのが、鶏鍋です。
丸ごと一羽の鶏を使った鍋で、日本ではあまり見かけない黒い鶏が使われていることもありました。
初めて見たときは、
「これは、ちょっと勇気がいるかも……。」
と思いました。
しかし、食べてみると臭みはなく、とてもおいしかったことを覚えています。
見た目だけでは分からない。
これも海外で食事をする楽しさの一つなのかもしれません。
ベトナム出張のお楽しみ (写真の画像は参考例です)

現地スーパーで見つけた、おすすめのお土産たち
海外出張では、ゆっくり観光する時間はほとんどありません。
それでも、ホテル近くのスーパーへ立ち寄るだけで、その国らしい商品にたくさん出会えます。
現地スタッフが普段食べているお菓子。
スーパーに並ぶ調味料。
日本では見かけないインスタント食品。
こうした売り場を歩くだけでも、とても新鮮でした。
筆者がよく購入していたのは、次のような商品です。
日本のお粥よりもしっかりした味付けで、スープのような食感です。
ベジタブルやチキンなど種類も多く、日本ではあまり見かけない商品でした。
「日本でも普通に売ってほしいな。」
と思うくらい気に入っていました。
ピーナッツを飴で固めた、とても素朴なお菓子です。
かなり甘いのですが、不思議と手が止まりません。
「甘い!」
「でも、おいしい!」
そんな会話をしながら、会社のみんなで食べたことを思い出します。
ココナッツの香りがしっかりした、ベトナムらしいお菓子です。
職場へのお土産としても配りやすく、毎回いくつか購入していました。
商品によっては包装が簡素なものもあるため、配る相手が多い場合は、少し品質の良い商品を選ぶと安心です。
ベトナムといえばコーヒーです。
工場でもホテルでも見かけたのが、G7のインスタントコーヒーでした。
お湯を注ぐだけで、ベトナムコーヒーらしい甘く濃厚な味を楽しめます。
定番のお土産として、今でもおすすめできる商品の一つです。
海外出張というと、工場とホテルを往復するだけの毎日を想像されるかもしれません。
もちろん、仕事が最優先です。
ですが、スーパーへ立ち寄ったり、現地スタッフおすすめのお店へ行ったり、その国の日常に少し触れる時間も大切な経験でした。
現地の人が普段どのような物を食べ、どのような生活をしているのか。
そうした何気ない体験は、その国への理解を深めるだけでなく、現地スタッフとの会話のきっかけにもなります。
生産管理の仕事は、人と人とのつながりの上に成り立っています。
仕事の話だけではなく、その土地の文化や食事を一緒に楽しむ時間も、信頼関係を築く大切な時間だったと感じています。
コロナ禍を経て、オンライン会議やチャットツールは急速に普及しました。
今では、日本にいながら中国やベトナムの工場と打ち合わせを行い、生産状況を共有することも珍しくありません。
実際、多くの業務はオンラインでも十分対応できます。
しかし、それでも現場へ行く価値がなくなったとは思いません。
工場へ行けば、
製品を実際に手に取ることができます。
生地の風合いを確認できます。
縫製状態も確認できます。
そして何より、
工場で働く人たちの表情を見ることができます。
メールだけでは分からないこと。
オンライン会議では感じ取れないこと。
そうした小さな気付きが、生産管理では大きな判断材料になることが何度もありました。
だからこそ、
現場へ足を運ぶことには、今でも大きな意味があると感じています。
生産管理という言葉を聞くと、
「工程管理」
「納期管理」
というイメージを持たれる方が多いかもしれません。
もちろん、それも間違いではありません。
しかし実際には、
もっと広い視点が求められます。
それぞれが別々の仕事をしています。
生産管理担当者は、
その間に入り、
情報を整理し、
全員が同じ方向を向けるよう調整していきます。
品質だけでも駄目です。
納期だけでも駄目です。
物流だけでも駄目です。
すべてがつながって初めて、
商品は店頭やECサイトへ並びます。
だからこそ、生産管理とは、
「人・品質・物流をつなぐ仕事」
なのだと思います。
今回ご紹介したベトナム工場での仕事は、中国工場で経験したことと比べると、国や文化の違いを感じる場面がたくさんありました。
どれも中国とは少し違います。
一方で、生産管理という仕事の本質は変わりませんでした。
現場で品質を確認すること。
納期を調整すること。
関係者と情報を共有すること。
そして、人と人との信頼関係を築くこと。
こうした積み重ねがあるからこそ、商品は予定どおり日本へ届きます。
今回の記事が、
これから海外工場と仕事をする方や、
生産管理という仕事に興味を持っている方の参考になれば、とても嬉しく思います。
中国・ベトナムから商品を輸入する際の全体の流れは、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
生産管理担当者は、生産スケジュールを確認するだけではありません。
生地や附属の納期確認、品質確認、生産会議への参加、サンプル開発、出荷数量の確認、SHIPPING TEAMとの情報共有など、商品が予定どおり日本へ届くまでの工程全体を調整します。
企画・生産・品質・物流をつなぐことが、生産管理担当者の重要な役割です。
文化や商習慣、働く人々の考え方には違いがあります。
一方で、生産管理担当者が行う基本業務は大きく変わりません。
納期管理、品質管理、生産会議、サンプル確認、物流との情報共有など、どちらの国でも同じ考え方で仕事を進めます。
筆者自身も、中国工場とベトナム工場の両方を担当しましたが、生産管理の本質は共通していると感じました。
オンライン会議で対応できる業務は年々増えています。
生産スケジュールの確認や情報共有など、多くの打ち合わせはオンラインでも十分可能です。
しかし、品質判断やサンプル確認、附属の納期調整、担当者同士の迅速な意思決定などは、現地でなければ難しい場面も少なくありません。
そのため、重要な局面では現地へ出張し、直接確認することが今でも重要だと考えています。
生産日程を前倒しできても、BOOKINGや輸送スケジュールが変更されていなければ、商品は予定どおり日本へ届きません。
反対に、物流だけを早めても、生産が終わっていなければ出荷できません。
つまり、生産管理と国際物流は別々の仕事ではなく、サプライチェーン全体を支える重要な業務として密接につながっています。
出張中は、生産会議への参加だけでなく、縫製ラインの進捗確認、品質確認、サンプル開発、附属の納期確認、現地スタッフとの打ち合わせなどを行っていました。
また、工場だけでなく、営業担当者やSHIPPING TEAMとも情報を共有し、日本への輸送スケジュールまで確認していました。
現場でしか分からない課題を把握し、その場で調整できることが海外出張の大きな目的でした。
工場によって異なりますが、日本語を話せる現地スタッフが在籍しているケースもあります。
一方で、英語を使用する場面もあるため、基本的な英語力があるとコミュニケーションの幅が広がります。
ただし、生産管理で最も重要なのは語学力だけではありません。
関係者と信頼関係を築き、課題を整理し、調整するコミュニケーション能力が重要だと筆者は考えています。
納期管理や品質管理の知識はもちろん重要です。
しかし、それ以上に求められるのは調整力です。
企画担当者、工場、生地メーカー、附属メーカー、検品会社、物流会社など、多くの関係者の間に立ち、情報を整理しながら商品を予定どおり出荷することが、生産管理担当者の大切な役割です。
物流会社への相談は、商品が完成してからではなく、生産計画が決まった段階から始めることをおすすめします。
生産スケジュールに合わせて輸送方法やBOOKINGを検討することで、納期遅延や余計なコストを防ぎやすくなります。
特に、中国・ベトナムから継続的に輸入を行う企業では、生産管理と物流を一体で考えることが、安定したサプライチェーンにつながります。
本記事では、生産管理担当者の視点から、ベトナム工場での仕事をご紹介しました。
生産管理担当者が工場で積み重ねた努力も、物流が止まればお客様へ商品は届きません。
言い換えると、工場で生産日程を前倒しできても、その後のBOOKINGや輸送計画が適切でなければ、商品は予定どおり日本へ届きません。
つまり、生産管理と国際物流は、それぞれ独立した仕事ではなく、一つのサプライチェーンとしてつながっています。
DIGISHIPでは、中国・ベトナムから日本への国際輸送をはじめ、輸入通関、国内配送まで一貫してサポートしています。
また、商社やメーカーの生産管理業務で培われる「納期」「品質」「物流」の考え方を大切にしながら、お客様のサプライチェーン全体を支援しています。
このようなお悩みがございましたら、お気軽にDIGISHIPまでお問い合わせください。
物流は、単に商品を運ぶ仕事ではありません。
生産現場で積み重ねられた努力を、日本のお客様へ確実につなぐ、大切な役割を担っています。
だからこそDIGISHIPは、単なるフォワーダーではなく、お客様のサプライチェーンを支えるパートナーでありたいと考えています。
中国工場での生産管理やアパレル貿易の現場については、本シリーズの過去記事でも詳しくご紹介しています。ベトナム編とあわせてお読みいただくことで、中国工場との共通点や違いもより深く理解できます。
5. 英語が苦手でもできる貿易事務|生産管理で使う英単語とメールの実例
6. 海外工場との生産管理で困ったときの英語 | 納期・認識ズレ・感情の伝え方まで、現場で本当に使っていた対応法
8. 海外工場における出荷管理の実務|完成品保管とコンテナバンニングの現場
9. 中国出張で現場の士気を上げる「お土産」のリアルと失敗しない選び方
10. 本記事「ベトナム工場の現場」
◇製作協力
株式会社JJコーポレーション
田中沙織さん