こんにちは!
このシリーズでは、商社で働く貿易事務や生産管理のリアルな日々をお届けします。
「どんな仕事をしているの?」「現場の苦労って?」そんな疑問に、経験をもとにお答えします。初めての方もぜひ読んでみてくださいね!
前回に引き続き、商社時代に経験した、中国、ベトナムからの輸入、 ベトナム向けの輸出(三国間貿易)貿易業務の中の契約や原産地証明書にまつわることを紹介させていただきます。
トピック1 契約 : 貿易取引の基本
トピック2 船積み
トピック3 原産地証明 : 貿易書類の一つ
まとめ
前回ご紹介の通り、貿易事務の仕事は、
1.船積書類等を入手し通関依頼
2.納品先倉庫へ納品SHIPPERへ支払いをする
という、文字にするとすごくシンプルなものです。
ですが、
・書類を入手するとき
・商品を納品するとき
・提携先へ業務を依頼するとき
・社内の関係部署へ手続きを進めるとき
現実は、様々な確認事項に問題がいくつも発生しており、今回はそのお話をさせていただきます。
まず初めは、貿易書類の中で最も大切な書類の一つである、契約書についてです。
契約書のサインバックがなかなかスムーズに入手できないことがよくありました。
入手が遅れるだけならまだしも、訂正となるとこれがまた面倒なことになります。
当時いた商社の社内システムのことです。
貿易取引が、初回であっても、継続であっても、発行する契約書は、必ず契約書番号を採番します。
契約書を訂正する時には、その都度、例えば「 R-1 」、「 R-2 」、とナンバリングされるため、訂正したすべての契約書を保存しなければならなかったのです。
そして、入力内容の変更を、
・単価訂正、、
・納期訂正、、
・品番訂正、、
などなど、毎回契約上の変更内容をわかりように記載して、上司へ回覧していました。そのため、何度も訂正することで、非常に気まずい思いをしていました。
まずは
・SHIPPERに営業担当者と決めた製品単価をきく
・営業担当者にも、契約書画面で入力した製品単価を聞く
双方の言い分に相違あれば、すぐに確認して決定してもらう。そして、契約書を発行する。
一般的に、商品の価格に関わる交渉や、その価格の確認などの契約内容は、商社の貿易事務の仕事ではないと思われる方もいるかもしれません。しかしながら、自分の仕事をスムーズに行うため、とにかく双方の擦り合わせ作業をよくしていました。
商社に関わらず、どの会社でも営業担当者は非常に忙しい職種です。そのため、やはり、契約書の事だけでなく、細かいところなどサポートできる部分はサポートしていくことが、最終的に、貿易事務を担当する後の自分の業務がスムーズに回ることを実感しました。
ほどなくして始まる船積み。
筆者が担当していたのは大手SPA。
輸入販売量は、40Fコンテナを毎週何本も出荷するほど大量でした。それらは、ベトナムホーチミン近郊の工場と、中国上海近郊工場から、それぞれ東日本、西日本の港向けに、毎週製品を輸入していました。
そのため、出荷書類の入手、数量のチェックなど、生産管理と貿易事務の担当者にとっては、結構大変でした。
受注は、まとまって受ける事が多く、お客様からの発注書は一括で発行されます。一方で、工場での生産は、全量一気に出来上がる事はないので、出来上がった数量から分納での納品対応。
SHIPPERもとにかく数量が多いので、書類の作成が追いつかない状況。
急げば急ぐほどミスが増える悪循環。
突如連絡がくるARRIVAL NOTEC。
フリータイムいつまでたっけ? え? あと3日、、、? きゃー!!!
これはどのPOの出荷分だっけーーーー!!!??
そこで、考えました。
とにかく問題が可視化できるよう、フォワーダー、SHIPPER、商社の3者間で情報を共有できる一覧リストを作成することにしました。
その1
船積み計画に基づき、SHIPPERが現地フォワーダーにBOOKING(船積み予約)依頼を入れる。
その2
BOOKINNG内容が確定したら、現地フォワーダーがBOOKING情報を一覧リストに編集し、SHIPPER、日本サイドのフォワーダー、商社へ配信してもらう。
その3
ETD(Estimated Time of Departure、出港予定日)、ETA(Estimated Time of Arrival、入港予定日)の日付をみながら、船積書類がいつまでに送付必要か確認する。
その4
書類締DL(=Deadline)は、CUT日から+3日程度で設定。
その5
DLを計算式を表に加え、3日過ぎると黄色マーク、5日以上すぎると赤マークがつくように書式ルール設定。
その6
SHIPPERへ連絡
その7
入手できたらグレーに塗りつぶしてグレー=完了
これらを、みえるようにしました。
とにかく
黄色:要注意
赤:危険
グレー:完了
を一目でみてわかるように
今一番やらなきゃいけないのは、表の一番上の赤マーク部分!
この表を運用することで改善されたのは、先の船積予定が分かるために、
・ちょっと今週は本数が多いから早めに書類作成準備しておこう、、
・ETAが今週末だからCO原本は今のうちにPUSHしておこう、、
と、お互いが先をみて動けるようになったと思います。
おかげで、書類のステータス管理がだいぶスムーズに行えるようになりました。
今思い返しても、当時ご協力いただいたフォワーダーの皆様にも非常に感謝です。
貿易書類の中の一つ。貿易取引される商品(輸入品や輸出品)の原産国を証明する書類です。
英語でCertificate of Origin です。そのため、CO、C/OやCOOなどの略称を用いる事があります。
貿易取引においては、契約書の中で、原産地証明書の発行について、明記する事もあります。
輸入するアイテムや生産国によって、この期間だけ特恵になるものもあります。
ここでいう、原産地証明書の特恵とは、「特恵関税制度」の適用を受ける際に用いられる原産地証明書のことです。開発途上国の産品に対して、一般の関税率よりも低い関税率(特恵税率)を適用する制度の事を、「特恵関税制度」と言います。
筆者は、ベトナム生産の雑貨系アイテムを担当していました。FORM AJを使用し、通年特恵関税での輸入が可能なものでした。
船積ごとに原産地証明を入手し税関へ提出、関税FREEの商品でした。つまり、関税が0%、無税で輸入できる商品でした。
原産地証明書の記載内容は、ほぼBLの内容と同じなので、特に難しいもの(書類)ではないです。しかし、Third Partyの記載、Retro Activity のチェック漏れなどがあり、何度か訂正したことがありました。INVOICE No.の記載と一致していないなどは、船積書類の方を訂正し、原産地証明に合わせることができるので、その訂正方法で対応していました。
原産地証明自体を訂正するには、原本と差し替えが必要なので、大変でした。
その手順は
・原産地証明書の原本を、ベトナム現地へ送り返す。
・ベトナムで再申請。
・訂正した原産地証明書の原本を、ベトナムから日本向けに発送。
・送料も日数も無駄にしていました。
対策
そこで、申請前にDRAFTを入手し日本側乙仲とも内容チェック、問題なければ申請し原本を入手する流れに変更。 チェックの手間は増えますが、そのひと手間を惜しまないことで返送費用、日数が掛かるより、はるかに効率はよかったです。
これ以外も、原産地証明にまつわる話は他にもあるので、改めてご紹介できればと思います。
今回は、貿易事務の仕事でぶつかるリアルな問題と、それをどう乗り越えてきたかをお話しました。ここでお伝えした通り、貿易事務では、契約書の訂正とか、原産地証明のチェックとか、地味だけどすごく重要な仕事が多いんですよね。めんどくさそうに見えるかもしれないけど、やってると「これうまく回った!」って達成感があるんです。
特に、情報を見える化したり、事前にチェックを徹底したりする工夫がポイントでしたね。一見、手間がかかるように見えて、結局その方が効率的だし、みんながスムーズに仕事を進められるんです。やっぱり「ちょっとの気遣い」が大事なんだなって改めて思います。
次回も、貿易事務の裏話やおもしろエピソードをたっぷりお届けします!また読んでくれると嬉しいです。最後まで読んでくれてありがとう!
◇製作協力
株式会社JJコーポレーション 田中沙織さん