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商社で働く!アパレル貿易と通関の現場のリアル 4

貿易事務 海外編

こんにちは。

筆者は、2006年より商社で繊維製品の輸出入業務及び生産管理として業務に携わってきました。

中国/上海、南通近郊、ベトナム/ホーチミン近郊の工場を担当しており、中国、ベトナムからの輸入、 ベトナム向けの輸出(三国間貿易)を主に行っておりました。

貿易実務1では主に国内への輸入に伴う書類業務を紹介いたしましたが、

今回は海外向けの貿易実務について紹介させていただきます。

トピック1 貿易実務 海外コミュニケーション編

トピック2 貿易実務 海外コミュニケーションツール編

トピック3 貿易実務 海外規制など

トピック4 貿易実務 海外輸送リードタイム

参考情報  上海港からの輸送リードタイム(平均)

貿易事務

トピック1 貿易実務 海外コミュニケーション編

海外に出荷する際も基本的には日本に輸入する流れと同じものとなります。

日本に輸入する際はフォワーダーとは、日本語でのやりとりしていました。一方で、海外向けとなると、海外各国の現地フォワーダーとやりとりとなるため、英語でのコミュニケーションが基本です。

繊維貿易の英語

筆者は、入社時は英語の文章は読めてなんとなく理解はできるものの、殆ど英語が喋れない状態でした。もちろんビジネス英語なんて始めて聞く言い回しや単語ばかり。

中国の工場の担当者は日本語も話せる方が多く、言葉に不自由したことはありませんでした。

ですが、ベトナムなど東南アジアの工場になると、日本語が話せない率がぐっと上がります。

そんな中ベトナム工場の担当になり、日本語が使えない状況に。。。

英語ができないのでそこは上司がなんとか対策してくれるだろうと高を括っていました。なんとかなるだろうと、、どうにかしてくれるだろうと。。。

上司のとった方法、郷に入っては郷に従え、突如として英語だけの世界へ投げ出す方法でした。

伝えなければいけないことあります!⇒とりあえずメールで連絡いれといて(英語で)

急ぎ確認あり! ⇒ とりあえずメールで連絡しといて(英語で)

この進捗どうなってますか? ⇒ とりあえず工場に確認いれて(英語で)

こちらも状況を止めてはいけないと必死なので、翻訳機能を使いながら英語でメールを作成する日々。 何もやらない 忙しい上司の対応を待つより、とにかく自分で確認できるところは進めていく、どうしても伝わらない、助けが必要になったら上司の出番。という風に、業務を進めていきました。

実践による慣れ

こんな日々を過ごすうちに、いつの間にか英語にも慣れてきました。今では貿易実務での読み書きで困ることは殆どなくなりました。

慣れてしまえば。そして、貿易に必要な用語と何が必要かを伝える単語を覚えていれば、コミュニケーションできるようになっていきました。日々読み書き、YouTubeで英語聞き流しをしてみたり、英語研修と称して海外旅行に行ってみたり、、、! 

英語に関わらず、外国語への距離感はぐっと身近なものになりました。

仕向け地によっては英語を母国語としていないところもあります。

特に東南アジアの独特な発音はなかなか慣れず、聞き取りも非常に大変でした。

緊急案件で急ぎで何か伝えたがっているけど、、、

焦りすぎて何を話しているのかわからずなんてことも。

いくら読み書きの勉強をしても、実際にメールや会話をする相手が使う英語や言語に慣れないとうまくコミュニケーションがとれないので、世間話など仕事とは少し違う話をして距離を縮めてみたり。

意外とこの方法が一番効果的たったかもしれません。

異文化コミュニケーション

伝えなければいけないこと、専門用語を英語で伝えること、異文化間ということもあり日本語間では起こらないコミュニケーションエラーが起きやすくなります。

小さな努力かもしれませんが、挨拶は現地の言語(中国語なら 你好! ベトナム語なら Xin chao!などなど)を使ったり相手との距離も近づくようにしていくと、文面だけの関係以上となり、お互いに母国語ではないなかで不明点があれば歩み寄り、この表現なら伝わるかな? この考え方は日本にしかない感覚かな? などただ伝えるだけではなく別の角度から伝えることができるようになったと思います。

貿易英語 よく使う例文3選

英語での表現で便利でよく使ったなぁと思うものをいくつか紹介いたします。

If you have any further questions, please feel free to contact me.

(さらに質問あればお気軽に御連絡ください)

Could you look into this matter and get back to us immediately?

(この問題を調査して至急折り返し連絡してください)

Thank you for your patience.

(もうしばらくお待ちいただければ幸いです)

この3文はよく文末に付け加えていました。

海外とのコミュニケーションツール

トピック2 貿易実務 海外コミュニケーションツール編

コミュニケーションツールと言えば、日本ではほぼLINEでのメッセージや通話がほとんどです。しかし、国によってLINEのようなアプリがそれぞれ存在します。

中国のアプリ

世界的にも利用者数が多い中国を代表するアプリといえば、WECHAT(微信)です。

中国の工場とはWECHATでグループを作りやりとりをしますが、チャット上に翻訳機能がついています。そのため、中国語でメッセージを送信、日本語で返信でもお互いが翻訳すればやりとりが可能になります。細かいニュアンスは翻訳しきれていないかもしれませんが、それでも基本的なやりとりに困ることはありません。

文面でのやりとりの他には、ボイスメッセージで送りあう方法もあります。中国ではボイスメッセージが主流なのか、やたらボイスメッセージを使います。もしかしたら、電車の中や歩きながら、来日している観光客がスマホにむかって何か話かけている中国人を見かけた方も多くいらっしゃると思います。これはボイスメッセージを送っているところかもしれません。

(返信もボイスメッセージで電車の中でも大音量で流れていることもたまにみかけますね、、、)

メッセージ、通話の他、支払い、SNSのような投稿、ニュース検索、おすすめ動画の表示などあります。ニュースなどは中国語での表示なので中国語の勉強をしている方、中国が好きな方などにもよいかもしれません。WECHATのメッセージはLINEのように既読表示がでないので、相手がメッセージをみたかどうか確認はできません。これはデメリットであり、、場合によってはメリットと言えるかもですが。。。

ベトナムのアプリ

ベトナムになると、ZAROというアプリが主流となります。

基本的な機能はLINEやWECHATと同じですが、今のところ言語設定はベトナム語か英語のみとなります。

WECHAT同様、メッセージ上で翻訳機能がついているので英語、ベトナム語、日本語、どの言語で送信しても翻訳機能を使い多言語でメッセージのやり取りは可能になります。

ZAROは最後にいつアプリを開いたか、メッセージは既読になったかどうかの表示があります。返事がなくてもとりあえずみたかどうか確認できるのでその面では使いやすいです。

貿易事務にはスマホアプリとPCの併用

どのアプリもPCからログインし使用できるので、一昔前のようにスマホでやりとり⇒PC資料作成⇒スマホに転送⇒スマホからチャットアプリで送信、など迂回せずともPC上だけで簡単にできるようになりました。

このように主流なアプリが各国で異なる場合、

この人とはZAROで、

あの工場とはWECHATで、

この取引先とはLINEで、、

はたまた社内では社内アプリでのチャット、、、

となり、この内容はどこで連絡したっけ、、?と混乱することも、、、

さらに会社によってはセキュリティの問題でLINE、WECHAT、ZAROなどのアプリのPCでの使用は禁止されていることもあるかと思います。

当時いた会社もPCでのアプリ使用は禁止だったので、探したい情報はPCメールで探し、スマホを探し、スマホの画面コピーをPCに転送し、、、

なんて本末転倒、まわりくどいやり方をしたりすることもありました。

アプリ活用方法の注意点

スピーディーにやりとりでき、写真やデータなどもサクッと送れるためメッセージアプリでのやりとりがビジネスでも主流となっています。しかしながら、やはり重要なことはチャットでやりとりした後でもメールで残しておくと安心だなぁと感じています。

アプリ内だと、画像やデータも一定期間すぎると削除されて見れなくなる場合もありますからね、、、

チャットだけに頼らず、メッセージを送ったあとでも、【先ほどチャットで御連絡しました件ですが、、】と必ずメールに残しておくようにしています。

海外貿易

トピック3 貿易実務 海外規制など

海外情報の入手

海外取引となると各国の規則などそれぞれ異なるため、この国ではこの書類が提出必須、

この内容で記載が必要、、などなどそれぞれの国によって対応することになります。

法規制も日々変わっていくので、今まではOKだったものがNGになったり、国際貿易に関する法規制の情報を日々UPDATEしていくことも重要です。

商社で働いていると、専門の部署が新しい法規制に対する研修を行ったり、大手SPAですと各仕入先向けに講習会を開いたり勉強する機会はたくさんありました。

自ら情報を得るために、カケン(一般財団法人カケンテストセンター)さんが品質に関する法規制の講習会を行っていたり、JETROに相談などをして情報を得ることもできます。

海外情勢に翻弄

法規制とはちょっと異なるかもしれませんが、

2022年ロシアのウクライナ侵攻によりロシアに出店していたブランドは次々と休業、または撤退をすることに。

筆者が担当していたブランドも急に撤退が決まったため、ロシアに到着する予定だった貨物もコンテナで出荷されたまま海の上でSTOP状態。。。。

他国に振り替えるのか、SHIP BACKするのか?

一度はロシア向けに輸出申請したものをどう振り替えられるのか、担当している誰もが大慌てでした。

製品だけでなく、これから生産を予定していた部分の原材料、付属などなど、破棄するのかそれとも

他国に振り替えできるのか? 振替不可なもの(ロシア語のタグなど)はどのよう処理するか。

各国により薬剤規制などもありました。この薬剤(たとえば抗菌防臭材など)を使用した製品については、A国では輸入できるがB国では輸入できないということもあります。

幸い、ロシア向けで生産していた商品はロシアの毒性指数試験に抵触しないよう薬剤等は一切使用していませんでした。生地の発注段階から薬剤の使用、不使用をわけて発注管理をしていました。生産も必ず薬剤の使用有、使用無で分けて生産していたため、他国へ振り替えた場合もどの国でも輸入可能な商品でした。無事、他の国向けへのオーダーへと振替し出荷することができました。

トピック4 貿易実務 海外輸送リードタイム

筆者は中国(上海)、ベトナム(ホーチミン)にて生産した商品を日本向けとその他海外向けに輸出しておりました。 

発注をもらう段階でお客様との納期を決めますが、輸送リードタイムが長い国を基準に発注はいつまでにもらわないといけないか?を計算していました。

リードタイムを計算

輸送LT(Lead Time)が長くなればなるほど遅延発生しやすくなり、●月△日までに納品(倉庫着)としていた契約が守れなくなることが多くなりました。

通常、天候不良や事故等 不可抗力による遅延などは原則として再度納期再設定し、新しい納期をターゲットに生産、出荷など再計画しなおしますが、

元の納期をKEEPして欲しいお客様。。。

新しい納期決めたから、この納期で出荷したい工場。。。。

話し合いをしたあの時間は幻だったのかな。。。

海外店舗増加に伴う変化

2000年代当時、貿易契約上の納期に関して、多少の遅延であれば大きな問題にはなりませんでした。それは海外店舗も少なかった。しかしながら、2010年代以降は、徐々に様々な国での出店も多くなりました。そのため、恐らく同じような問題が各工場でも頻発するようになったようです。海外向けの契約納期は、変化が起きました。納品日ベースではなく、最終出荷日 ●月◯日ETD というような、出荷日ベースで指定されるようになりました。

仕向け地によっては船が週1便、 LCL(混載便)になるとさらに2週に1便となるので、タイミングが合わないとこれまたなかなか厳しい納期になるので要注意です。

時を同じくして出荷だけでなく、品質や生産、その他のルール、規則も日本の基準からグローバル基準へと変化していったように感じます。

大まかにですが、参考までに中国、ベトナムから各地への船積リードタイムをご紹介いたします。

船で旅をしたらこの港につくまで何日間かかるのかぁ。。。。

1日目は船の中を散策して、、、

2日目は海をみながら日光浴、夜は星空を眺めながらお酒を飲んで、、

なんてぜひクルーズ船で世界旅行の妄想をお楽しみください。(実際はコンテナ船ですが、、、、w)

海外貿易の参考情報

■上海港からの輸送リードタイム(平均)

上海

■ホーチミン港からの輸送リードタイム(平均)

Ho Chi Minh

※1:

インド、インドネシアは通関処理に、約3日から7日程度かかることが一般的です。

他国よりも納品までに時間がかかります。

※2:

US向けでも西海岸、東海岸では距離が離れているため、同じ国でも倍近く船足が変わります。