
こんにちは!
筆者は2006年より、商社で繊維製品の輸出入業務及び生産管理に携わってきました。
中国の上海・南通近郊、ベトナムのホーチミン近郊の工場を担当していました。
その時に、中国・ベトナムから日本への輸入、ベトナム向けの輸出を含む三国間貿易など、さまざまな貿易実務を経験してきました。
商社で仕事をしていると、フォワーダーや通関業者との関係は切っても切れません。
ただ、当時の私たちは「一番安いフォワーダーを1社選んで、すべての輸送を任せる」という仕事の仕方をしていたわけではありませんでした。
これらの案件によって、フォワーダーや通関業者を使い分けていました。
そして、長く商社で貿易実務に携わっていると、フォワーダーの役割は単に「貨物を運んでもらうこと」だけではないと感じるようになりました。
商社にとってフォワーダーは、単に貨物を運ぶ会社ではありません。
輸送コスト、納期、梱包、生産計画まで含め、同じサプライチェーンを動かす存在になることがあります。
今回は、そんな商社とフォワーダーの関係について、私自身の実体験をもとにお話ししたいと思います。
商社がフォワーダーをどう選び、物流コスト・納期・積載効率・三国間物流をどのように改善してきたのか。
商社マンの実体験から、フォワーダーとの実務上の関係を紹介します。
商社は「価格」だけでなく「得意エリア・輸送形態・物量バランス」で複数のフォワーダーを使い分ける。
継続的な案件では、輸送だけでなく梱包・納期・生産調整まで伴走してくれるパートナーシップが不可欠。
具体的な選定・比較基準は「中国輸入フォワーダーの選び方(7つの基軸)」を参照。
なお、「自社にはどのようなフォワーダーが合うのか」「中国輸入フォワーダーをどう探せばよいのか」については、別記事で詳しく整理しています。
私が所属していた営業課とは別に、社内には物流を専門とするチームがありました。
さらに、物流専門の子会社として通関業者・フォワーダーもありました。
物流チームにはさまざまな外部の通関業者・フォワーダーが常駐しており、社内にいながら各業者の担当者と直接仕事を進めることができました。
今振り返ると、かなり恵まれた環境だったと思います。
商社の場合、取り扱う物量も非常に多いため、すべての貨物を同じフォワーダーへ任せるわけではありません。
例えば、
といった具合です。
物流チームの方針によって、部署や客先、揚げ地などに応じて、複数のフォワーダー・通関業者を使い分けていました。
つまり、商社とフォワーダーの関係は「1社を選んで終わり」という単純なものではありませんでした。
フォワーダーや通関業者を選ぶとき、やはり最初に分かりやすいのはコストだと思います。
製品を生産する営業マンとしては、
「出来るだけコストを抑えて利益を出したい!」
これは常に頭の中にあります。
そのため、スポットで輸入する場合などは、単純に運賃が安いという理由でフォワーダーを選ぶこともありました。
1回だけの輸送であれば、仮に何か問題があったとしても、次回は別の業者へお願いするという判断もできます。
しかし、年間を通じて継続的に輸入する案件では話が変わります。
仕向地、輸入か輸出か、SHIPかAIRかによっても、フォワーダーの得意分野は異なります。
さらに、年間何十本ものコンテナを輸入する大型案件では、営業担当者個人の判断だけでは決まりませんでした。
会社全体の物量バランスを見ながら、物流チームが物流う業者を決めることもありました。
ですから、
「運賃が安い=その商社に合うフォワーダー」
とは限りません。
これは、長く取引を続けるほど実感したことでした。
私が担当していたのは大手SPA向けの製品で、コストも納期も非常に厳しい要求がありました。
SPAとの取引では、
企画 → 原料調達 → 生産 → 出荷 → 納品
まで管理します。
つまり、製品そのものの原価だけでなく、物流にも常にコストと納期がついて回ります。
生産数量は年間何百万枚という規模で、コンテナにすると年間数十本、数百本という量でした。
そこで重要になったのが、コンテナの積載効率です。
私が担当していた製品は、とてもかさばる商品でした。
例えば、20GPコンテナで1,000枚SHIPしても、4,000枚SHIPしても、基本的にコンテナ単位で発生する輸送費は大きくは変わりません。
それなら、
出来る限り最大数量でSHIPしたい!
となります。
そこで、過去の出荷状況を洗い出し、運賃や通関費用などを含めて、
「この船積みでは製品1枚あたりいくら物流費がかかったのか」
を計算しました。
すると、「何枚以下では物流効率が落ちる」「何枚以上なら効率が上がる」という分岐点が見えてきます。
そこで工場には、
フルコンにならない場合でも3,000枚以上で出荷する。
3,000枚以下では出荷しない。
というルールをお願いしました。
工場としては、完成した製品から早く出荷したいので、コンテナが十分に埋まっていなくても出してしまうことがあります。
まずは、ここから改善しました。
次に見直したのが梱包です。
フォワーダーさんにコンテナサイズについて教えてもらい、コンテナに対して最も効率よく積載できるカートンサイズを考えました。
すると、
「あと3cm、梱包箱が小さければ横4列から5列になる!」
「製品の畳み方を3重から2重にすれば、上にもう1列積める!」
といったことが見えてきました。
そこで、製品の畳み方やカートンサイズを微調整しました。
物流コストを下げるというと、つい「運賃を安くしてもらう」ことを考えがちです。
しかし、このときは違いました。
物流に合わせて、梱包そのものを変えたのです。
さらにフォワーダーと確認すると、利用する船社によって運賃や諸経費にも大きな差があることが分かりました。
当時、契約している船社Aと契約外の船社Bでは、約1.5倍の差が出るケースがありました。
そこで、それまでの、
工場の出荷スケジュール → 船を選ぶ
という考え方を変えました。
船のスケジュール → 生産・出荷を合わせる
という考え方です。
その結果、コンテナ1本あたりの積載数量が増え、コンテナ本数を削減し、輸送コストの削減にもつながりました。
工場と商社だけでは改善できなかったことを、フォワーダーを巻き込むことで改善できた経験です。

コンテナの積載効率を高めるには、カートンサイズだけでなく、工場での保管やバンニング方法まで含めて考える必要があります。
海外工場で実際に行っていた完成品管理やコンテナ積み込みについては、第8回で詳しく紹介しています。
繊維商社で仕事をしていると、とにかく納期との戦いでした。
生産工場で製品が出来上がるのがギリギリになる。
すると最後は、
「あと1日でも早く!」
「欲を言えば、あと3日……!」
と、物流側で何とか納期を縮めたくなります。
そこで最後に相談するのが、日本側のフォワーダーさんでした。
フォワーダーの担当者が社内に駐在していたので、そんなときはデスクまで走って相談に行きました。
「○日までに倉庫へ納品したい!」
PCの前に一緒に並び、現地でいつコンテナを出せるのか確認しながら、船のスケジュールを見ます。
「最短ならこの船。でも経由便だから船足が長い」
「あと1日だけ早くコンテナを出せれば、このDirect船に乗せられる」
「それなら3日早くできる!」
そんなふうに、カレンダーを見ながらベストなスケジュールを一緒に考えてもらいました。
ほんの数日です。
でも、商社の現場では大きな数日でした。
この納期短縮には、何度も助けられました。
長年同じ担当者に対応してもらっていると、客先ごとの特徴まで把握してくれるようになります。
例えば、ある客先には「新しいコンテナを使用してはいけない」というルールがありました。
こちらから縫製工場へ伝えるだけでは、現地フォワーダーまで正しく情報が伝わっているか分かりません。
しかし、日本側のフォワーダーから現地側へも客先ルールを共有してもらっていたため、該当するコンテナが使われることはありませんでした。
さらに、特定国の特恵や規制情報など、工場や営業課だけでは入手しにくい情報を先回りして教えてもらうこともありました。
今思うと、
「ほんと、こんなことまでやっていただいてありがとうございます……」
という気持ちです。
アパレル貿易では、生産だけでなく輸送リードタイムから逆算して納期を管理する必要があります。
海外輸送のリードタイムと納期管理については、第4回でも実体験を紹介しています。
第4回|貿易と海外取引の実務解説!商社のアパレル貿易と通関ノウハウ
繊維製品の生産では、日本と縫製工場だけで物流が完結するとは限りません。
例えば、
というケースがあります。
中国で生産した原材料をベトナムへ送り、ベトナムで製品にして日本へ輸入する形です。
当初、原材料の物流は縫製工場が現地のフォワーダーを使い、商社を入れずに管理していました。
ところが、
なんともまぁ、管理が不透明。
いつ原材料が入荷するのか正確な情報が取れず、その結果、生産が遅れることが多発しました。
「このままでは大きな問題が起きる」
そう考え、日本への輸入だけでなく、中国からベトナムへの三国間物流にもフォワーダーさんに入ってもらうことにしました。
BOOKING状況、SHIPスケジュール、輸入通関、デリバリー予定などを一覧表にして、関係者へ共有してもらいました。
そして、そのスケジュールを見ながら、
を確認します。
中国、ベトナム、日本のフォワーダーも連携していたため、問題が起きそうな場合には商社へ連絡が入り、商社から素材メーカーや縫製工場へ確認・注意を入れることもできました。
つまり、フォワーダーに入ってもらったことで、単に貨物を運ぶだけでなく、サプライチェーンの状況を見える状態にできたのです。
振り返ってみると、フォワーダーにお願いしたのは「輸送」だけではありませんでした。
商社から見えにくかったサプライチェーンの一部を、見えるようにすることでもあったのだと思います。

ここでもう一つ、私が商社で聞いた昔の話をご紹介します。
私が担当した頃には、日本側だけでなく輸出国側も同じフォワーダー、あるいはその提携会社を利用することが多く、FOBやFCAで取引していました。
一方、それ以前は、中国側のフォワーダーについては輸出者へ任せ、CNF(CFR)やCIFで取引するケースも多かったそうです。
ここからは私自身が経験したことではなく、入社後に社内で聞いた話です。
2000年頃、中国からの輸入で、本来は輸出者側が負担すべき費用が「Other Charge」などの名目で日本側へ請求されるケースがあったそうです。
1回あたり1~2万円程度と比較的小さな金額だったこともあり、担当者レベルでは問題だと思いながらも、なかなか抜本的な改善まで進まなかったと聞きました。
しかし、その後、客先からの価格要求も厳しくなり、商社側でも物流コストへの意識が高まります。
そこで物流チームが中心となり、
という方向へ変わっていきました。
物流コストを見直すことは、単にフォワーダーへ値下げをお願いすることだけではありません。
貿易条件や物流の管理範囲そのものを見直す。
これも商社の物流改善だったのだと思います。
では、商社で実際に仕事をする中で、私はフォワーダーや通関業者のどんな対応に助けられたのでしょうか。
まず、船やドレーを希望どおり手配してもらえること。
特に年末年始、ゴールデンウィーク、お盆前後などは、早めにドレーを押さえなければ納品できないことがあります。
そのため、BOOKINGが入った時点で情報を共有し、
「このコンテナは○日」
「こちらは△日」
という具合に、ドレーを仮押さえしてもらっていました。
工場の生産スケジュールや納品先との日程は自分たちで交渉できます。
しかし、ドレーはフォワーダーにお願いしなければ手配できません。
だからこそ、希望するタイミングで物流を動かせるかは、とても重要でした。
さらに、とてもありがたかったのが、船積み書類や原産地証明などのチェックです。
もちろん、こちらでも確認してから通関を依頼します。
それでも、不備があるまま書類を出してしまうことはありました。
そんなとき、
「この書類、ここの記載が違いますよ!」
と、すぐに連絡をくれる担当者がいました。
メールの返信も早い。回答も正確。
「この人、間違うことあるのかな!?」
と思うくらい、信頼していました。
ただし、フォワーダーや通関業者も人間です。
私は、完璧であることが重要だとは思っていません。
問題が起きたとき、どれだけ早くリカバリーしてくれるか。
こちらの方が実務では重要でした。
例えば、
「船が遅延しています」
「連休前なので、ドレーは早めに予約した方がいいですよ」
「この港は混雑しているので、別の船を検討した方がよさそうです」
「CY CUTが早まりそうなので、このままだと間に合わないかもしれません」
こうした情報を、こちらから聞く前に共有してもらえると非常に助かります。
また、長年取引しているフォワーダーであれば、客先ごとの細かな物流ルールまで営業課以上に把握していることもありました。
生産のことは商社で対応できても、物流のことは物流のプロに聞いた方がよい。
商社時代に何度も感じたことです。
もちろん、船のスケジュールに生産を合わせるためには、中国工場側の生産管理も欠かせません。
中国工場で実際に起きた納期遅延や生産管理の課題については、第7回で詳しく紹介しています。
第7回|中国工場の生産管理|納期遅延と旧正月対策・逆算スケジュール
もちろん、すべてが良い経験だったわけではありません。
「このフォワーダーさんは使えないな~」
と思ったこともあります。
ある客先指定のフォワーダーでは、現地工場がBOOKINGを依頼しても、なかなか船が決まりませんでした。
すると支払計画までずれ、次の生産スケジュールにも影響します。
まさに悪循環です。
さらに、日本側へ「現地の動きが遅い」と相談しても状況が変わらず、同じ会社なのに日本と海外側でうまく連携できていないように感じました。
また、担当者が変わるたび、毎シーズン継続している商品なのに原産地証明について同じ質問を受け、同じ説明を繰り返したこともあります。
「せめて、そこは引き継いでてほしかったぁ……」
と思ったものです。
しかも客先指定なので、コストが高くてもこちらから変更できません。
こうした経験をすると、フォワーダーとの関係では、運賃だけでなく、
レスポンス、正確性、情報共有、海外拠点との連携、そして担当者間の引き継ぎ
まで重要なのだと実感します。
ここまで私自身の経験を振り返ってみると、商社とフォワーダー・通関業者は、単に「荷物を運んでもらう」「通関してもらう」だけの関係ではなかったと思います。
特に、私が担当していたSPAとの取引では、細かな対応と厳しい納期管理が求められました。
商社だけで、企画から生産、輸送、通関、国内配送、納品までをすべてスムーズに進めることは到底できません。
だからこそ、フォワーダーにも入ってもらい、日々コミュニケーションを取りながら一緒にスケジュールを管理していました。
こうして並べてみると、フォワーダーの仕事は、私にとって単なる「輸送手配」ではありませんでした。
商社とフォワーダーが、同じ納期、同じ客先、同じサプライチェーンを見ながら動く。
そんな関係だったのだと思います。
そして理想を言えば、
「このフォワーダーにお願いすれば安心」
と商社が思える。
一方、フォワーダー側にも、
「この商社となら長く仕事を続けたい」
と思ってもらえる。
どちらか一方だけに負担や不利益が偏るのではなく、一つのチームとして長く付き合っていける。
私にとっては、そんな関係が理想です。

ここまで、私が商社で経験してきた「商社とフォワーダーの関係」を振り返ってきました。
では、現在フォワーダーを探している企業にとって、どのような会社が自社に合うのでしょうか。
フォワーダーに求める役割は、企業の貿易経験や商品、取引規模、中国側への対応力などによって変わります。
「良いフォワーダー」ではなく、「自社に合うフォワーダー」をどう探すのか。
こちらの記事で詳しく整理しています。
商社時代の私たちが案件ごとにフォワーダーを使い分けていたように、フォワーダーに唯一の正解があるわけではありません。
自社が何をできて、何をフォワーダーに求めるのか。
その違いによって、物流のパートナーとの関係も変わってくるのだと思います。
フォワーダーは、国際輸送の手配だけでなく、輸送スケジュールの調整、通関、国内配送、海外拠点との連携など、商社の物流を支える役割を担います。
実務では、納期やコスト、生産計画まで含めて相談することもあり、商社と同じサプライチェーンを動かす存在になることがあります。
必ずしも1社だけを選ぶとは限りません。
この記事で紹介した実体験では、輸出・輸入、SHIP・AIR、仕向地、客先、取扱量などによって、複数のフォワーダーや通関業者を使い分けていました。
そのため、料金だけでなく、自社の案件や物流体制との相性を見ることが重要です。
できます。
物流改善は、フォワーダーを変更したり運賃を値下げしてもらったりすることだけではありません。
この記事でも、積載数量、カートンサイズ、船社、生産・出荷スケジュールなどを見直すことで、物流コストを改善した実例を紹介しています。
現在のフォワーダーと一緒に物流の仕組みを見直すことも、改善方法の一つです。
まず、自社の貿易経験、商品、取引規模、中国側への対応力、必要なサービスなどを整理することから始めます。
「良いフォワーダー」を探すのではなく、自社でできることと不足していることを整理し、その不足を補ってくれるフォワーダーを探すという考え方が重要です。
具体的な探し方・選び方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
本シリーズでは、繊維商社で実際に経験した貿易事務、生産管理、海外工場とのやり取り、通関、出荷管理などを、現場でのエピソードを交えて紹介しています。
第11回では「商社とフォワーダー」に焦点を当てましたが、契約 → 生産管理 → 出荷 → 国際輸送 → 通関 → 納品まで、商社の仕事は一つにつながっています。
繊維商社の仕事とは?
貿易・生産管理・営業の全体像を完全解説【シリーズまとめ】
自社に最適なフォワーダーの使い分けや、中国・アジアからの物流コスト・納期見直しについてお悩みの際は、
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製作協力
株式会社JJコーポレーション
田中沙織さん