こんにちは。
筆者は、2006年より商社で繊維製品の輸出入業務及び生産管理として業務に携わってきました。
中国/上海、南通近郊、 ベトナム/ホーチミン近郊の工場を担当しており、中国、ベトナムからの輸入、 ベトナム向けの輸出(三国間貿易)を主に行っておりました。
前回は貿易にかかる書類業務をメインに仕事の内容を紹介させていただきましたが、今回は生産に関わる管理業務(=生産管理)について紹介いたします。
あるある! こんなこともやってるんだ! これは役にたちそう!などお届けできればと思います。
前回は、生産管理としてサンプルを手配する時の手順を紹介しました。
色指示(PANTONEカラーや、希望色の生地断片など)を、現地の生地工場へ送付
その色に合わせて生地や付属などを染めてもらう
既に生地工場で何色も在庫があれば、生地台帳からこの色の生地と指定することもある
このような手配の手順があります。
繊維関係の方なら確実に経験があるのは「色」の問題だと思います。
ちょっとしたブレで、全然見え方が変わってしまします。これらを、白度合わせなんて言葉を使ったりしますね。
アンミカさんも、白は「200色あんねん」って言ってた。そうです、この白とあの白は全違う白なのです。。。。
当時生産管理の担当者として、サンプルを依頼していた時の事です。中国の生地工場とは、PANTONEで色指示を出していました。PANTONEであれば、現物を送付しなくても番号を伝えれば各国共通で同じ色を確認できるのです。でも、どうしても色が合わない、色ブレがひどいので、
ちゃんと指示のPANTONE番号確認してる!?
ちゃんと色合ってるか確認してる!?
と詰め寄ったところ、中国のPANTONEは色が違うんです!!
と、、、
そんなことあるかーーー!!
と全員がつっこんだエピソードです。
このサンプルが企画会議に乗らないと契約は決まらない。そのため、なんとしてでも間に合わせたい!テーブルに乗せたい!と、直接商談をする日本サイドの生産管理のの担当者としての熱量はMAX。海外の離れたところからサンプルを作成する海外の工場の熱量はそこそこ。どうしても差がでてしまいます。
生地工場は、染色釜が空くのを待ってます。
そして、納期は未定の1点張り。
いやいや、今週中に生地UPしないと間に合わないよ?
とのやりとりを皮切りに、現地スタッフ、営業、全員巻き込んで、納期を猛PUSH。
工場のサンプル釜が一瞬空いた際にいれてもらい、なんとか生地を染めてもらうことに成功!
縫製工場も、今日中に発送しないと会議間に合わないーーーー!!
と大騒ぎする日本側に対し、残りのサンプルは明日発送しま~す。
なんてのんびりした返事。これはもう日常茶飯事です。
何度も何度も、
このサンプルがなければ契約とれないよ!
と熱く語り、残業して対応してもらうことに。
それでも心配なので、現地の商社スタッフが工場に張り付き、ちゃんとサンプルを作成しているかみてもらい、対応してもらいました。
やはり顔の見えない電話やメールの海外の相手よりも、同じ国の対面している担当から直接交渉してもらうほうが工場の士気もあがるようでした。
無事サンプルが完成し、あとはクーリエ(OCSやDHLなど)で出荷して完了!
となるのですが、ここにもまた一波乱。
クーリエは、海外からの荷物を輸入するため、税関でのチェックが入ります。
午前何時までに通関がきれれば、午後に空港から出荷する配達までに間に合う!
という感じなので、通関が切れるかどうかこまめにチェック。
ここで問題なければ、当日中に荷物を確認し、客先へ発送。
本当に不安で、輸入通関が止まって配達が遅れそうな時は、対策があります。
都内のオフィスから、電車を乗り継いで成田空港まで、生産管理の担当者が自らサンプルをとりに行く!
トラブルはオフィスで起きているんじゃない、問題は現場で解決するんだ!
なんて対応もしていました。
そうです、デスクワークだけでなく、生産管理の担当者はサンプルを運ぶフィールドワークもあるんです。
また別の時には、他部署との社内連携もありました。
他部署の出張者の帰国日が、サンプル出荷日とタイミングよく合えば、好都合です。そんな時には、中国やベトナムの現地空港で待ち合わせして、サンプルを受け取って貰います。その後、出張者には、HANDCARRYしてもらい、日本の空港で受け取ります。この社内連携によって、成田空港を出たその足で、都内のお客様に生産管理の担当者がサンプルを直接お渡ししに行く!なんて綱渡り状態で、サンプルをお客様へお届けしたこともありました。
とにかく会議に間に合わない=死んでしまう。そんな気持ちになることも。そうです、本当にこの企画会議のためのサンプルはいつも緊張感がありました。
いろんなところに撒いておいた保険(代替え生地、事前サンプル確認など)
現地スタッフの工場張り付き、、、などなど、
みんなの協力のもと、なんとか企画会議に提案サンプルも間に合い、展開する商品が決定まりす。
その次は、本当にその商品が問題ないものか?品質の確認をすることになります。
企画品質会議では、企画面を決定するほか、仕様面、縫製面等の品質問題が本生産の時に発生しない様に検討します。サンプル作成を通して、製品の品質を保持することも、生産管理の仕事の中で、重要な事です。
このような、さまざまな検査を実施します。
また、本当にこのレベルの製品が量産できるのか?
これらはすべて、発注前に確認しなければいけないポイントです。
例えば、履物(靴)を例にとってみます。
濃い色のインソール(中敷き)だった場合、靴下の色移りがないかの品質懸念が考えられます。
色移りする可能性があれば、白やベージュなどの淡色に変えたほうがよいのではないか? と改善案を模索します。
履いて歩いた時に、底材が剥がれてしまわないか?
滑りやすい素材で滑って転んでしまう可能性はないか?
製品試験や、実際に何人かに履いてもらいモニターを実施し問題がないかを確認します。
少し前ですと、とあるブランドのコラボ商品において色移りが発生し、販売停止になるニュースがありました。(目玉のついたバッグですね、、)
開発段階、量産の段階での検査は問題がなかったとしても、実際の量産であがった生地の中の一部で色移り等問題が発生した場合、販売中止、返品対応、追加生産中の同SKUの生産停止などなど大きな問題に発展していまいます。人体への影響がなくても、縫製工場や販売元は大きなダメージを受けてしまいます。
つまり、サンプル段階では、量産でも同等に品質がKEEPできるのか、擦り合わせしておく必要があります。
工場では、サンプル室で工員さんが手作りをしていることも多いです。そこでは、熟練の工員が生産しているので、多少難しい仕様でも作りあげてしまいます。そのため、技術的難易度の事前確認がポイントです。サンプル段階でも仕様面の確認しておかないと、難しい仕様だから量産はできない問題も発生してしまいます。
手で細かい部分を表現できたとしても、実際に生産するのは生産工場の工員さんたち。
この工程を本生産でやろうとすると、生産計画より生産数が50%ダウン。そうなると納期が単純に後ろにずれて納期遅延の発生なんて問題も出てしまいます。
製品の品質面、縫製面の他、実際に生産に入った時の納期関係も視野にいれて開発を進めていくことも必要になります。
本来であれば、上述の開発の段階でリスクを排除しながら進められればいいのですが、、、
開発時間も少ないため、深く検証することが難しい状況でした。
基本的には品質の問題がクリアになっていないと契約成立とはなりません。
もちろんお客様も品質に問題がないのを確認してから発注実行します。
お互い社内事務処理があるため、品質検査結果のレポートを送付してすぐに発注書を発行できるわけではありません。
明日のAMまでに試験結果を送付しないと、次に発注書発行できるのが1週間後。。。。
そしてもう1点、企画確定で重要なポイント。
それは、「 コスト 」です。
コストを計算するのは基本的には営業の仕事です。
そして、前回の記事でも少しふれましたが、営業職はとても忙しい仕事です。
しかし、現実のビジネスの中では、コストの提出、、、、
そう、毎回ギリギリにお客様に提出するのです。
(工場に急いでサンプル作ってもらい、企画も決定しそう!だけどコスト確認したら全然はまってなかった、、、なんて大問題も割とあるあるですね)
期日までにコスト提出、問題なければいいのですが、ここから値段が違う、承認できない、などなどでてくるのです。そして期日が過ぎ、また発注書の発行が1週間ずれる。。。。
ようやくこの1週間が重なり、後の納期問題につながるのです。。。。
次の記事では、企画決定しオーダー受注。 そのあとの生産計画管理について紹介させていただこうと思います。
◇製作協力
株式会社JJコーポレーション 田中沙織さん