こんにちは。
筆者は、2006年より商社で繊維製品の輸出入業務及び生産管理として業務に携わってきました。
中国/上海、南通近郊、ベトナム/ホーチミン近郊の工場を担当しており、中国、ベトナムからの輸入、ベトナム向けの輸出(三国間貿易)を主に行っておりました。
貿易にするにあたり、事務業務以外の実際に生産現場で行われている管理業務(=生産管理)について紹介いたします。
あるある! こんなこともやってるんだ! これは役にたちそう!などお届けできればと思います。
前回は生産管理業務を大まかに分類した際の企画品質管理をお話させていただきました。
今回は、生産計画管理についてのご紹介です。
1企画品質管理
2生産計画管理
3量産計画管理
生産計画管理
生産計画管理とは、読んで字の如く、生産するにあたり様々な面からスケジュールを確認し計画を組み立てていきます。
繊維輸入貿易の生産準備を開始するにあたり、確実に必要なものが契約書です。
契約書がないと何にも始まりません。工場は契約を交わしていないものに対して、どうすることもできません。発注書を受注し、工場へオーダーを早くすることがスムーズに生産を行う大切な第一歩になります。
前回は、「契約書の入手」、「繊維商社の契約書と発注」、「契約の前の確認」についてご紹介しました。今回は、その続きをお話しします。
無事に受注した後は、こんな流れです。
後は、順調に生産が進んでいくかを管理することになります。
発注がでたあと、各資材関係を手配します。資材の調達は大きく分けて、2つのルートがあります。
ルート1 全て工場が手配する場合
ルート2 日本側から無償提供する場合
調達する資材によっては、複合型もあります。一部を工場が手配、一部を日本から無償提供する事もります。更に、第三国から調達して、工場へ提供する事もあります。
経験も豊富で工場管理もしっかりとした工場だと、ある程度まかせておいても順調に生産にむけて準備を進めてくれます。その時は、こちらから進捗状況を確認する頻度も少ないのです。しかしながら、経験が浅かったり、管理が全然できてない工場だと、生産予定間近になって、大問題発言も出てきます。
資材準備がちゃんと設定した日に発注完了し、おおよそいつの納期になるかのトレースをします。これらの確認作業によって、資材遅延による生産開始遅延の早期発見につながります。
そうそう、取引が始まったばかりの工場で、生地の発注は問題なく進行し、*月*日頃工場着予定です。と確認をとり問題ないなぁと思っていたのですが、、、
実際に入荷した数量を確認すると、なぜかオーダー数量の5倍もの数量。計算間違い!?!?にしても量が多すぎる。
理由をきいたところ、
「 発注予定があと●●●枚あるって聞いたから、先に生地発注しておきました。 」
とのことです。。。。
計画は計画であって、発注が実際にでるかもわからない!
しかも、色サイズも、どの割合ででるか全然不明なのに!!
まさか発注した数量が適正かどうかまでチェックしなければいけないなんて、、、
今まで担当していた工場がいかにちゃんとしていたかを思い知らされました。
過剰に手配した生地は、追加オーダーが出た分に振分け、アローアンスギリギリまで出荷。それでも余ってしまった生地は、柄がはいっており転売もできないため破棄となりました。本当にもったいないことをしました。
実際に生産に入る前に、手配した生地や資材など本当に決定したデザインと一致しているか確認する必要があります。
サンプルで作った生地を量産向けに再度手配した際、色差が発生することが多くあります。
その色差が、
お客様にとって許容できる範囲なのか?
それとも作り直しをしなければいけないレベルなのか?
こんな事を確認します。
実際に生産に入ったあと色差NGがでてしまうと、縫製完了した製品全て出荷不可となってしまいます。そのために、生産前にクリアにしておくことが大切です。
この確認は、各ブランドによって異なります。
品質基準も易しいブランドですと、よっぽど変なことがない限り、上がってきた製品でNGでることはほぼありませんでした。
これは数量が少なく、別注対応が難しいためできる範囲の資材で生産を進めるためです。
逆に、数量が多く品質基準も厳しいブランドになると、ほんの僅かな色差でもNGが出る場合があります。
それは、色差のある生地で生産した商品がもし店頭で並んでしまった場合、この白は黄色味があるけど、この白は青味がある。など同一商品とならないためです。
グローバルブランドは、全世界同一品質を謳うため、仕様面以外でもわずかな違いもNGになってしまう可能性があります。
それでも、グローバルブランドならではの、解決策もあります。
判断に迷う程度のNGが出た場合、同じ店頭に並ばないように、
など出荷を分けて対応する方法もありました。
これは、海外にも展開店舗のある大手SPAならではの対応方法です。
生産しているブランドがどの基準でどのように生産を進めるか事前に確認し、都度承認をとってクリアにしながら生産の準備を進めることがとても大切です。
生地の他にも、必要な資材はたくさんあります。
タグ(品名やバーコード、サイズなどが書かれたもの)や、品質表示(洗濯方法などを表記しているもの)があります。
タグや品質表に記載する内容は、「家庭用品品質表示法」に商品の品質について事業者が表示すべき事項や表示方法が、法律により定められております。
デザインが決定したあと、どんな内容で表示内容を決定するか、製品洗濯試験や生地試験などを実施し、洗濯表示の内容をきめていきます。
情報源 : 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods
内容が決まらないと品表等の付属手配が進められません。そのために、考える事があります。
ここでも、逆算してスケジュール管理していきます。
特に、お客様から会社指定がない場合は、品質表示内容をカケンやボーケンなど検査機関と相談しながら内容を決めます。その内容を、お客様に提出しOKをもらうという流れになります。この方法は、デザイン決定次第に品質表示案も主導で進めることができるので、管理しやすいのですが、、
お客様に拠っては、自社の基準、フォーマットがあり、お客様の指示をもって手配開始となります。
品質表示が決定するまでに、このような流れがあります。
これらは、それぞれ部署をまたぐため、時間を要することが多々ありました。
グローバルブランドのSPAでよくあること
生産担当部署がしっかりと、「いつまでに決定してください!」と品質、付属チームに共有してくれればいいのですが、、、なぜか社内共有してくれないお客様、、、
同じ会社なんだから、他部署でも確認してよーー!と思いつつ、大きい会社ほど、横のつながりが無さすぎて確認できないのも事実のようで。。。
なぜか私が付属部門の担当者を紹介されて私から確認を入れるということも。
なんだか不思議なやりとりをしていました。
日本展開だけなら決定しすぐに手配開始できるのですが、
海外店の展開があると、決定した内容からさらに翻訳作業がはいり、その国の法律で問題がないかの確認も必要なため余分に時間がかかります。
縫込み品質表示ラベルは、生産縫製時に必要になるため、品質表示ラベルが到着しない限り縫製スタートできません。
これが原因で納期が遅れる場合、付属チームの手配が遅くなったため、この分の遅延はお客様より了承をもらったりしていました。
製品につけるタグなどは、縫製が終わってから使うため生産は進められるが最終梱包ができずに出荷が止まってしまいます。
ファッション・アパレルは、季節に合わせて販売時期が決まっています。そのために、納期を優先する傾向がある業界です。
お客様も担当しているアイテムで、納期遅延を出したくないなどの理由もあるようでした。その時は、こんな技もありました。
作業費用は発生しますが、おそらく社内で付属部の承認が遅かったから!ということで、生産部と付属部で折半したのかな?と思われます。
付属遅延に便乗し、工場要因の納期遅延を隠していたことなんて事もありました。。。
付属による遅延は、工場にとって生産ストップしてしまう危険もありましたが、時に救いになることも事実です。
オーダー受注し生産に必要な資材関係も全て揃ったら、次は実際に量産、出荷、納品と進んでいきます。
次の記事では、実際に生産開始するにあたっての量産計画管理について紹介させていただこうと思います。
次号 量産計画管理
◇製作協力
株式会社JJコーポレーション 田中沙織さん