海外工場の出荷管理は、「発送するだけの作業」ではありません。
SKU混在、数量違い、水濡れ、異物混入など、
出荷段階のわずかなミスが、入荷トラブルやクレームにつながるケースは少なくありません。
特に海外工場では、現場管理の精度によって品質とコストが大きく左右されます。
実際、出荷工程の管理不足が原因で、
「入荷後に全量検品」「販売停止」といった事態に発展することもあります。
製品を安全かつ正確に出荷するための管理業務全体を指します。
本記事では、中国工場で実際に行っていた出荷管理の実務をもとに、
完成品保管からコンテナバンニングまで、具体的な管理手法を解説します。

海外工場の出荷管理において、最も重要な基盤となるのがSKU管理です。
この管理が曖昧な場合、タグミスや数量違いなどのトラブルが発生しやすくなります。
ここでは、実際の現場で行っているSKU単位管理の方法を解説します。
前述の通り、筆者が担当していた中国の工場は工場レベルとしてはとても高く、ある程度お任せしていてもそれなりに管理ができている工場でした。
のちに担当するベトナム工場で指導する際にも、中国工場のやり方を参考にすることも。
製品が出来上がり、出荷するまでには、以下のような感じで製品保管を行い管理していましたので、ご紹介いたします。
完成品は他SKUが混在しないように、1SKU単位で管理し作業を行います。
一目でわかるように、仕向け地、サイズ、色などをわかるように表示します。
ここで不明瞭なままにすると、タグのつけ間違いや梱包間違いなどの発生につながります。
製品に取り付ける付属品(製品タグや、シールなど)も、同様にSKU単位で管理し混在を防ぎます。
→ SKU管理が崩れると、ほぼ確実に出荷トラブルにつながります。
出荷管理で最も重要な要素の一つがSKU(Stock Keeping Unit)です。
SKU管理の基本や通関との関係については、
「SKU管理と通関の実務ポイント」で詳しく解説しています。
製品を梱包(タグつけ、畳)する際は、1SKUごとに行います。
附属品を取り出すときも、資材管理者がどのSKUの付属品を何枚だしたか台帳に記録をつけて管理します。
作業が終わり、余った附属品は再度資材管理部へ戻し、枚数を数えて台帳に記録します。

梱包された完成品はカートン梱包します。
カートン梱包する際は、外装印字が梱包内容と一致していることを確認します。
バーコードシステムを使用している工場の場合は、製品をスキャンし問題がなければすぐに梱包を行いますが、スキャンシステムを使用してない場合、目視での確認になります。
目視の場合、間違い等発生しやすくなるため、ダブルチェック実施などでミスを防ぎます。
外装には、主に社名(Consignee)、品名、品番、重量、カートンサイズ、原産国などが記載されています。
この印字内容は、出荷時や入荷時に作業する際や、店頭へ出荷する際に必要な情報です。
外装にブランド名なども印字することもありますが、とある地方でとても人気のあるブランドの生産をしていたのですが、保管中や輸送途中に盗難が多発する事態となってしまいました。
そのため、盗難のリスクのあるエリアではカートン外装にブランド名の印字を廃止し、どのブランドかわからないように対策をとることもありました。
→ この工程での管理ミスは、出荷トラブルの主な原因となります。
梱包された製品はすぐに出荷する場合を除き、工場の倉庫にて一定期間保管することになります。
保管方法は、工場の保管倉庫になるべくSKUごとのかたまりで積み重ねていきますが、倉庫環境の管理がとても重要になります。
倉庫内が直射日光の当たる環境や高温多湿となると、保管中にカビの発生のリスクがあります。
また、窓や扉が開いていると、虫が混入する可能性もあります。
保管時に発生しそうな問題は以下のように管理していきます。
倉庫に温湿度計を設置し、保管に適した環境になっているかを確認できるようにする。
温湿度計の設置も人の目線(床から1.5m程度)に位置に置くなど、設置場所も決められている場合があります。
また、温度や湿度か適温湿以上になる場合は、クーラーやドライルームなどの設置を要望される場合があります。
虫の混入を防ぐために、出入口扉開放を禁止したり、窓には必ず網戸を設置するなど決められています。
もし網戸が無い窓などがあれば、その窓の使用は禁止となります。
ただし、扉や窓などについては各国の法令などにより、開放しなければならない、窓をつけなければいけない等対応が難しい場合があります。
その場合は、製品に虫が入らないように布をかぶせたりして対応します。
出荷管理の重要事項として、コンテナの種類・サイズ、重量制限や外観・内部チェックのポイントは欠かせません。
より実務寄りの詳細なガイドは
コンテナ完全ガイド|種類・サイズ・重量制限・トラブル対策まで徹底解説(その2) をご覧ください。
バンニングとは、コンテナに貨物を積み込む作業のことを指します。

バンニングは単なる積み込み作業ではなく、
入荷時の検品効率と事故リスクを左右する重要工程です。
出来上がった製品は、SHIPに向けバンニングです。
コンテナに積み込む際は、積み込む前にまずコンテナチェックを行います。
そして更に、コンテナの外部/内部に異常がないかを見ていきます。
コンテナの外部は、割れや破損、扉の開閉の異常がないかを確認します。
例えば上部に割れがあった場合、海上輸送中に雨などが降ったらそこから水が漏れ、製品に水濡れダメージが発生してしまうこともあります。
コンテナ内部は、側面に割れなどがないか、床は穴や破損がなく平らになっているか、腐食、油汚れ等がないか、虫やゴミなどの異物が無いかを確認します。
内部に破損があった場合、カートン積み込み時や輸送時に傷がつく可能性があります。
また、虫やゴミ、はたまた害獣などかあると、異物混入となってしまいます。
破損等確認したあとは内部の掃き掃除をしてから積み込み開始となります。
客先によっては、新しいコンテナや、10年以上経過したコンテナの使用を禁止するところもあります。
問題があるコンテナだった場合はフォワーダーへ連絡し、別のコンテナに交換してもらいます。
基本的に工場に空コンテナを送り込む前に、CYターミナルとドライバーの間でEIR(EQUIPMENT INTERCHANGE RECEIPT)を作成し、問題がないコンテナを工場に運んでもらうようになっています。
EIRには、コンテナに破損や傷の状態を確認し問題がないかが記載されたもので、コンテナに何か問題があればEIRを確認します。
それとは別に、工場独自のコンテナチェックリストを作成していました。
コンテナ到着時、問題があった場合はEIRとは別に工場独自のコンテナ検査表や写真撮影をして記録をとっていました。
コンテナ外観やコンテナ内部の状態を記録しておくことは、単なる管理強化ではありません。
万が一、輸送中に水濡れや破損、荷崩れなどの事故が発生した場合、外航貨物海上保険に基づく求償手続きにおいて重要な証拠となります。
コンテナ搬入時の外観写真、内部の床や側面の状態、積み込み完了時の写真、シール番号の記録などは、「工場出荷時点で異常がなかった」ことを示す根拠になります。
これらの記録がなければ、事故原因の所在が曖昧となり、保険求償が困難になるケースもあります。
出荷管理とは、事故を防ぐことだけでなく、万が一に備えて証明できる状態を作ることでもあります。
保険会社や損害鑑定人(サーベイヤー)は、事故発生前後の状態を写真や記録で確認します。
積み込み時の日時、天気、コンテナNO、シールNOの他、コンテナの状態などより詳細な情報を記載し一定期間書類の保管をします。
EIRより詳細にチェックを行っているため、日本側の倉庫でコンテナを開封したときに何か問題があった場合、工場到着時、コンテナを閉める時、工場サイドでは問題が無かったと証明することができるので、工場責任の回避ができました。
「コンテナ」とはどのようなものか、その誕生から現代物流に至る進化を知ることで、現場での管理の意味や価値がより深く理解できます。
コンテナがもたらした世界的インパクト(その1) でも詳しく解説しています。
工場出荷時のコンテナバンニングでは、箱の積み方にルールがあります。
これは積み込み時、手書きでパッキングリストの控えをとる時に間違いが発生しないようにSKU単位で積み込んでいくほか、入荷時(デバン)に、SKU、アソートNo.など,明細を確認しやすくする為でもあります。
SKU単位で積み込む時、複数人でバンニングを行うと、作業時間は短縮されますが、SKUがミックスされてしまうことが考えられます。
そのために、1SKU単位で荷物を移動させ積み込んでいく必要があります。
また、外装は一方方向に積み込む、つまり、扉を開けた時に全て外装が同じ向きになるようにそろえること。
これはデバンの際に入荷数量チェックをしやすくするためです。
生産工場、日本の倉庫で共通のバーコードシステムを使用している場合、カートン外装にバーコードシールを張り付ける場合もあります。
バンニング時にスキャンして出荷数量の管理、デバンニング時にスキャンして入荷数量の管理が行えます。
バーコードは主に外装の狭い面、長い面それぞれ1面ずつ、右上など決められた場所に貼付けます。
次に注意が必要なのが、カートンの積み込み方です。
しわや商品破損防止のため、天地の向きを逆にしないこと。
そのため外装には天地無用(THIS WAY UP)のマークを付けることがあります。
天地逆にしてしまった場合、荷下ろしの際のSKU確認が間違ってしまったりする可能性もあります。9⇒6、2⇒5 など。
また、輸送時の衝撃により荷崩れが発生する場合もあります。
荷崩れ防止のため、コンテナ奥から荷物を積み込んでいき、扉の前が完全に空いてしまわないよう階段式にカートンを積んでいくこと。
コンテナ満載にならない場合は全体的にフラットになるように積み込みを行います。
輸送時、コンテナ内部で荷崩れが発生してしまった場合、日本でデバン作業時に扉を開けたとき、カートンが崩れ落ちて怪我をしてしまうことが考えられます。
特に重量が重い商品で荷崩れが発生し、扉を開けた瞬間作業員の上に落ちてきたら、、、、大事故になりかねません。
→ この工程での判断ミスは、そのまま「輸送事故」に直結します。
これらは「コンテナ内結露」や「湿気トラブル」の典型例です。
海外工場、とくにベトナム南部や中部エリアでは、雨季のバンニング作業に特別な配慮が必要です。
ホーチミン周辺は熱帯サバナ気候、ダナンなど中部地域はモンスーン気候に属し、雨季には高湿度とスコールが頻繁に発生します。
そこで、実際に雨が降っている時のコンテナ積み込みでは、以下の点に注意が必要です。

雨天時に屋外でバンニングを行うと、短時間でもカートンが水分を吸収します。
カートンボックスは濡れると強度が著しく低下し、輸送中の荷崩れや変形の原因になります。
可能な限り、屋根や天蓋のある場所でコンテナへ積み込む体制を整えることが重要です。
積み込み前にカートンが湿っていないか確認します。
表面がわずかに湿っているだけでも、長期海上輸送中にカビが発生するリスクがあります。
必要に応じて、乾燥時間を設ける、吸湿剤を追加するなどの対応も検討します。
雨天時は、コンテナ内部の床に雨水が吹き込んでいる場合があります。
積み込み前に床面を触れて確認し、水分があれば必ず拭き取りを行います。
わずかな水分でも、海上輸送中の温度変化により結露を助長する要因となります。
雨季は路面がぬかるみ、フォークリフトのタイヤに泥が付着しやすくなります。
そのままコンテナ内部に進入すると、床面に泥が入り込み、カートン底面の汚損や湿気保持の原因になります。
タイヤ洗浄エリアを設ける、コンテナ直前で簡易清掃を行うなどの対策が有効です。
雨季のバンニングで想定される事故には以下があります。
これらは出荷時点での小さな水濡れが原因となるケースが少なくありません。
海外工場の出荷管理は、
「ミスを防ぐ」と「証明する」の2つが本質です。
SKU管理、倉庫環境、コンテナチェック、バンニング方法。
これらを体系的に管理することで、トラブルは大幅に減らすことができます。
とくに重要なのは、
「問題が起きない状態を作ること」と
「問題が起きた際に説明できる状態を残すこと」です。
現場での小さな改善の積み重ねが、
最終的に品質と信頼を支えています。
一つ一つは小さな改善かもしれませんが、これが大きな事故を防いだり作業効率をアップさせることが可能です。
ハインリッヒの法則というものがあります。
これは労働災害において、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の無傷事故(ヒヤリ・ハット)が存在するというものです。
生産工場も同様、掃除、整理整頓、同じ場所にものを置く。
という、基本的な動作を改善することにより、
など、極端な例かもしれませんが、小さなことが大きな事故につながることを防げる可能性は大きくなります。
一つ一つの工程ごとの小さな改善、それが大きなミスを防ぐ近道なのだと思います。
出荷管理は「現場任せ」にせず、仕組みとして設計することが重要です。
海外工場の出荷管理や輸送でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
実務ベースで最適な輸送方法をご提案いたします。

Q1. 海外工場の出荷管理で最も多いトラブルは何ですか?
最も多いのは、SKU混在や数量違いによる入荷時の差異です。
そのほか、コンテナ内部の水濡れや荷崩れ、虫混入なども発生します。
出荷前のSKU単位管理やコンテナチェック、記録の徹底がトラブル防止の基本となります。
Q2. コンテナチェックは必ず海外工場側で行う必要がありますか?
はい。
CYでのEIR確認だけでなく、工場到着時に独自のチェックを行うことが重要です。
外観・内部の破損や汚れの有無を確認し、写真記録を残しておくことで、万が一の事故時にも状況を証明できます。
Q3. 海外工場でのバンニング時に注意すべきポイントは何ですか?
主なポイントは以下の通りです。
作業効率よりも「ミスを防ぐ積み方」を優先することが重要です。
Q4. 海外工場の倉庫保管中に起こりやすい問題は何ですか?
高温多湿によるカビ、虫混入、外装劣化などが挙げられます。
温湿度管理、出入口管理、SKU単位での保管徹底が基本対策となります。
アパレルCSRで工場はどう変わったのか|工場運営と倫理・リスク
◇製作協力
株式会社JJコーポレーション 田中沙織さん